MCPとは?初心者向けにやさしく解説!AIツール連携の新しい仕組み
この記事でわかること
- MCPとは
- MCPの仕組み
- MCPの活用例
- MCPを使用している製品・サービスの例
最近、AIツールの世界で「MCP」という言葉をよく目にするようになりました。MCPは「Model Context Protocol」の略で、ChatGPTやClaudeなどの生成AIが外部のツールやデータと連携するための新しい技術規格です。簡単に言えば「AIの能力を簡単に拡張するための共通ルール」。この記事では、AIに詳しくない方でも理解できるよう、MCPとは何か、どんなメリットがあるのか、実際にどう使えるのかをわかりやすく解説します。AIをもっと便利に活用したい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
MCPって何?わかりやすく解説
「MCP」という言葉を最近よく耳にするようになりましたが、実際にどんな技術なのかよくわからないと感じている方も多いのではないでしょうか。このセクションでは、MCPの基本概念をできるだけわかりやすく解説します。
MCPとは「Model Context Protocol」の略|AIのツール接続規格

MCPは「Model Context Protocol(モデル・コンテキスト・プロトコル)」の略称で、生成AIが外部のツールやデータソースと簡単につながるための技術規格です。簡単に言えば、「AIがいろいろな機能を使えるようにするための共通ルール」といえます。
この技術は、Claudeで有名なAnthropic社が2024年11月に発表したもので、生成AIの活用範囲を大きく広げることを目的としています。従来、AIに外部システムの機能を利用させるには、システムごとに個別の接続方法(API連携)を開発する必要がありました。これは時間もコストもかかる作業です。
MCPはこの課題を解決するために、AIと外部システムの接続方法を標準化しました。例えるなら、電化製品の電源プラグを世界中で統一するようなものです。この標準化により、一度MCPに対応したAIアプリケーションは、他のMCP対応ツールともスムーズに連携できるようになります。
技術的に言うと、MCPはJSON-RPCベースのプロトコルで、クライアント・サーバーモデルで動作します。しかし難しい話はさておき、重要なのは「AIがより多くのことを簡単にできるようになる」ということです。
「AI界のUSB充電器」として理解するMCP

MCPを理解するためには、身近な例え話が役立ちます。MCPは「AI界のUSB充電器」と表現されることがあります。この比喩がなぜわかりやすいのか考えてみましょう。
かつての携帯電話(いわゆるガラケー)時代を思い出してみてください。ドコモ、au、ソフトバンクなど各キャリアが独自の充電端子を採用していました。友人の家に泊まったとき、自分のスマホの充電器を忘れると、友人の充電器が使えずに困った経験はありませんか?
しかし、スマートフォン時代になってUSB-Cが普及すると、ほとんどのデバイスが同じケーブル一本で充電できるようになりました。この変化によって、私たちの生活はずっと便利になりました。
MCPはまさにこれと同じことをAI界で実現しようとしています。これまでは、AIアプリケーションごとに独自の方法で外部ツールと連携していました。例えば「Webを検索する」「ファイルを保存する」「カレンダーに予定を登録する」など、AIに様々な機能を持たせるたびに個別の連携開発が必要でした。
MCPを使えば、AIアプリケーションは一度MCPに対応するだけで、MCP対応のあらゆるツールと簡単に連携できるようになります。10個の機能を追加したいなら、従来は10個の異なる連携を個別に開発する必要がありましたが、MCPなら一つの標準でそれらすべてを扱えます。
なぜMCPが注目されているの?生まれた背景
ここ数年で、ChatGPTやClaudeなどの生成AIは私たちの生活やビジネスに急速に浸透してきました。しかし、どんなに優秀なAIでも、最新の情報や特定のシステムにアクセスできなければ、その能力は限定的なものになってしまいます。
例えば、ChatGPTに「今日の東京の天気は?」と聞いても、AIモデルの学習データに含まれる情報だけでは正確に答えられません。最新の天気情報を得るには、天気予報サービスと連携する必要があります。同様に「明日の会議を午後3時にカレンダーに登録して」というリクエストも、カレンダーシステムと連携できなければ実行できません。
これまでは、こうした外部システムとの連携が大きな課題でした。各AIアプリケーション開発者は、連携したいシステムごとに独自の方法で接続を実装する必要があり、これは非常に非効率でした。また、あるAIアプリで開発した連携機能を別のAIアプリで再利用することも難しい状況でした。
MCPはこれらの課題を解決するために生まれました。特に以下のような背景があります。
・AIエージェントの需要増加
・多様な外部サービスとの連携ニーズの高まり
・開発者間での連携機能の共有促進
・AIアプリケーションのエコシステム形成の必要性
MCPにより、AIと外部システムの「提供のしかた」と「呼び出し方」が共通化され、エコシステムを形成しやすくなりました。これは、スマートフォンのアプリマーケットのように、誰もが独自の機能をAIに提供できる世界への第一歩といえるでしょう。
※AIエージェントについては『AIエージェントとは?種類やメリット、各社の取り組みを徹底解説』の記事をご覧ください。
実際の動作例:「今日の天気を教えて」をMCPで処理すると?
具体例を通してMCPの動作を見てみましょう。ユーザーがAIアシスタントに「今日の東京の天気を教えて」と尋ねた場合を考えてみます。

ステップ1:ユーザーからのリクエスト
あなたがAI(例えばClaude Desktop)に「今日の東京の天気を教えて」と質問します。
ステップ2:AIによる理解と必要な情報の特定
AIは質問を理解し、現在の天気情報が必要だと判断します。しかし、AIは自分の知識だけでは最新の天気情報を持っていないことを認識します。
ステップ3:MCPクライアントの起動
AIは内蔵されたMCPクライアントを使って、天気情報を提供できるMCPサーバーと通信しようとします。
ステップ4:ユーザーの許可
セキュリティのため、AIは最初にユーザーに許可を求めます。ユーザーが承認すると、次のステップに進みます。

ステップ5:MCPサーバーとの通信
MCPクライアントは、天気予報サービスを提供するMCPサーバーに接続します。
このサーバーは「天気を取得する(get_weather)」というツールを提供しており、パラメーターとして「場所」を受け取ります。
ステップ6:外部サービスでの情報取得
MCPサーバーは、実際の天気予報APIに接続して東京の最新天気情報を取得します。
ステップ7:AIへの結果返却
取得した天気情報はMCPサーバーからMCPクライアントを通じてAIに返されます。
ステップ8:ユーザーへの応答
AIは取得した天気情報を自然な形でユーザーに伝えます。
この一連の流れは、ユーザーにとっては「AIに質問して答えをもらう」というシンプルな体験ですが、裏側ではMCPを通じて複数のシステムが連携して動作しています。MCPの本当のすごさは、ユーザーに意識させることなく複雑な処理を行ってくれる点にあります。
同様の仕組みで、カレンダーへの予定追加、メール送信、ファイル作成、情報検索など、さまざまなタスクをAIに実行させることができるようになります。しかも開発者は、MCPという統一されたプロトコルを使うことで、これらの機能を効率よく追加できるのです。
MCPの仕組みを分かりやすく解説
MCPの概念がわかったところで、もう少し具体的に仕組みを見ていきましょう。言葉だけでは理解しづらい技術も、イメージで捉えると理解しやすくなります。このセクションでは、MCPの構造や動作を身近な例えを使って説明します。実際にイラストに例えると、MCPの仕組みがより明確になります。
「お客さん」と「お店」に例えるMCPの基本構造
MCPの仕組みを理解するには、私たちの日常生活で馴染みのある「お買い物」の例えが役立ちます。
まず登場人物を紹介すると下記の通りです。
・あなた(ユーザー):何か欲しいものがある「お客さん」
・AI(Claude等):あなたの要望を理解する「コンシェルジュ」
・MCPクライアント:コンシェルジュの指示を受け、適切なお店と連絡を取る「取次係」
・MCPサーバー:商品(情報やサービス)を提供する「専門店」
お買い物の流れとMCPの仕組みを比較してみましょう。
- あなたが「新しい靴が欲しい」とコンシェルジュ(AI)に伝えます
- コンシェルジュはその要望を理解し、取次係(MCPクライアント)に依頼します
- 取次係は靴専門店(MCPサーバー)に連絡を取ります
- 専門店は在庫の中から適切な靴の情報を取次係に伝えます
- 取次係はその情報をコンシェルジュに戻します
- コンシェルジュはあなたに「こちらの靴はいかがでしょうか?」と提案します
この例えでいうと、MCPは「取次係がどのように専門店とコミュニケーションを取るか」の共通ルールを定めたものです。このルールを統一することで、どの専門店とも同じやり方でやり取りができるようになります。
実際の技術的な構造では、MCPはクライアント・サーバモデルに基づいています。
・MCPホスト:生成AIモデルを搭載したアプリケーション(例:Claude Desktop)
・MCPクライアント:MCPホスト内に組み込まれたコンポーネント。サーバとの通信を担当
・MCPサーバー:特定のデータソースやツールへのアクセスを提供する軽量サーバ
これらのコンポーネントはJSON-RPC 2.0プロトコルを使用して通信し、標準化された方法でデータをやり取りします。
MCPの2つの役割:情報を取ってくるツールと作業をするツール
MCPサーバーが提供するツールは、大きく分けて2つの役割を持っています。
情報を取ってくるツール(情報取得ツール) :
これは、AIに外部の知識や情報を提供するためのツールです。
例
・Web検索ツール:インターネット上の最新情報を検索
・ファイル読み取りツール:ローカルやクラウド上のファイル内容を読み取り
・データベースクエリツール:データベースから情報を取得
これらのツールはRAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)の一種とも言えます。AIの知識を拡張するために外部情報源から関連データを取得するアプローチです。
作業をするツール(外部操作ツール) :
これは、AIが人間の代わりに実際の作業を行うためのツールです。
例
・カレンダーツール:予定を登録・変更・削除する
・メール送信ツール:メールを作成して送信する
・ファイル作成ツール:文書やスプレッドシートなどを作成・編集する
これらのツールによって、AIは単に情報を提供するだけでなく、実際のタスクを実行することもできるようになります。「AIに仕事を任せる」という未来の実現に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
MCPの優れた点は、これらの異なる種類のツールを同じプロトコルで統一的に扱えることです。開発者は一度MCPの使い方を学べば、どんなツールでも同じ方法で連携させることができます。
また、MCPサーバーは主に以下の3つの重要な機能を提供します。
・リソース:AIモデルが参照できるデータやコンテンツ(ファイル、データベース、ドキュメントなど)
・ツール:AIモデルが実行できる関数やアクション(計算、API呼び出し、データベースクエリなど)
・プロンプト:AIモデルの応答を形作るテンプレート
これらの機能を組み合わせることで、非常に柔軟で強力なAIアプリケーションを構築できるようになります。
MCPがあるとどんないいことがある?5つのメリット

MCPがどのような技術なのかわかってきたところで、導入するとどんなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。実はMCPは、AIを使った開発やサービス提供において、多くの課題を解決してくれる可能性を秘めています。
メリット1.AIに様々な能力を簡単に追加できるようになる
MCPの最大のメリットの一つは、AIアプリケーションに新しい機能を簡単に追加できる点です。従来のシステム統合では、連携したい外部サービスごとに個別のAPI統合が必要でした。例えば、AIに天気予報、株価情報、カレンダー管理など10個の機能を追加したい場合、10個の異なるAPIとの連携を個別に開発する必要がありました。
しかしMCPを使えば、一度MCPクライアントを実装するだけで、すべてのMCP対応ツールと簡単に連携できるようになります。まるでスマートフォンのアプリストアのように、必要な機能を選んで追加するイメージです。
この効率化により、開発者は以下のようなメリットを得られます。
・開発時間の大幅短縮(APIごとの個別設計・実装が不要に)
・コード量の削減(共通のプロトコルによる統一的な実装)
・保守の容易さ(共通のエラーハンドリングやテスト方法を適用可能)
特に小規模開発チームやスタートアップにとって、この開発効率の向上は大きな競争力になり得ます。限られたリソースでより多くの機能を実装できるからです。
メリット2.異なるAIツール同士が連携しやすくなる
現在のAI開発エコシステムでは、多くの企業や開発者が独自のツールやサービスを提供しています。しかし、これらのツールは互いに連携できるよう設計されていないことが多く、「サイロ化」と呼ばれる孤立した状態になりがちです。
MCPはこの問題を解決し、異なるAIツール間の相互運用性を大幅に向上させます。例えば下記の例があげられます。
・異なるAIアプリケーション間でツールを共有できる(Claude DesktopからもClineからも同じMCPサーバーを利用可能)
・多様なベンダーが提供するツールでも、同じ方法で接続できる
・既存のツールを新しいAIアプリケーションに簡単に適用できる
これはちょうど、ウェブブラウザの標準化によって、どのブラウザでも同じウェブサイトが閲覧できるようになったことに似ています。MCPという共通言語があることで、AIツールのエコシステムが健全に発展しやすくなるのです。
企業にとっては、特定のAIプラットフォームに依存せず、最適なツールを組み合わせて使うことができるという自由度が生まれます。「ベンダーロックイン」の心配が軽減されるわけです。
メリット3.自分専用のAIアシスタントが作りやすくなる
MCPの登場により、自分だけの特別なAIアシスタントを作ることが、以前よりずっと簡単になります。
従来のAIアシスタントのカスタマイズは、主にプロンプトエンジニアリング(適切な指示文を作ること)に依存していました。しかし、これには限界があり、AIモデルが元々持っている知識や能力の範囲を超えることは難しかったのです。
MCPを活用すると、AIアシスタントに新しい能力を追加できるため、次のようなカスタマイズが可能になります。
・特定の業界や分野に特化したAIアシスタントの構築 (例:医療データにアクセスできる医師向けアシスタント、法律データベースと連携する弁護士向けアシスタント)
・自社のシステムやデータと連携するビジネス向けアシスタント (例:社内文書を検索できる、営業データを分析できる、社内チャットに投稿できるなど)
・個人の生活や趣味をサポートするパーソナルアシスタント (例:自分の写真ライブラリを理解する、スマートホームデバイスを操作する、特定のWebサービスと連携するなど)
MCPにより、「これができたらいいのに」と思う機能を実際にAIに追加できるようになるため、AIをより自分の役に立つ存在に育てることができます。
メリット4.最新情報や専門知識をAIに提供できるようになる
AIモデルは、トレーニングデータに含まれる情報にしかアクセスできないという制限がありました。例えば、「今日の天気は?」「最新の株価は?」といった質問に正確に答えることができませんでした。また、特定の企業の内部情報や専門的なデータベースの情報も利用できませんでした。
MCPはこの制限を打破し、AIに外部データソースへのアクセス権を与えることで、以下のような情報を活用できるようにします。
・リアルタイムデータ(ニュース、天気予報、株価、交通情報など)
・専門分野のデータベース(医療情報、法律判例、科学文献など)
・企業の内部情報(社内文書、プロジェクト情報、顧客データなど)
これにより、AIは単なる「静的な知識の保管庫」から、最新の情報に基づいて判断できる「動的な情報処理アシスタント」へと進化します。例えば、企業の内部データと連携させたAIアシスタントは、「先月の売上が最も高かった製品は?」という質問に正確に答えられるようになります。
特に企業にとっては、独自の知識ベースやデータソースと連携させることで、汎用AIを「自社専用の専門家」に変えることができる点が大きなメリットです。
メリット5.セキュリティ面も考慮されている安心設計
AIに外部システムへのアクセス権を与えることは、セキュリティやプライバシーの観点からリスクを伴います。MCPはこれらの懸念に対処するため、セキュリティを重要な設計原則として組み込んでいます。
MCPのセキュリティアプローチは「明示的な同意」を中心に据えています。
・ユーザーの許可と制御:
AIがツールを使う前に、ユーザーの明示的な承認が必要です。例えばClaudeが「Googleドライブにアクセスしてもよいですか?」と確認を求め、ユーザーが許可した場合のみツールが利用されます。
・データプライバシーの保護:
MCPホストアプリケーションは、ユーザーの許可なしにデータをサーバーに送信しません。特に機密情報を扱う企業にとって、これは重要な保護層となります。
・実行前の確認:
AIが「このコードを実行して」と提案した場合、そのコードが何をするのかをユーザーが確認し、承認するステップが組み込まれています。これにより、悪意のあるコード実行のリスクを軽減します。
・LLMサンプリング制御:
AIモデルが新しいテキストを生成する過程でも、ユーザーの管理下に置かれます。例えば、AIが外部APIを使おうとする場合、その操作をユーザーが承認するかどうかを選択できます。
これらの多層的なセキュリティ対策により、MCPは便利さと安全性のバランスを取りながら、信頼性の高いAI連携を実現しています。実用的なAIシステムにとって、ユーザーの信頼を得ることは非常に重要であり、MCPはそのための堅固な基盤を提供しているのです。
身近に感じる5つのMCP活用例
MCPの概念や仕組み、メリットについて理解したところで、実際にどのような場面で活用できるのか見ていきましょう。抽象的な技術の説明よりも、具体的な活用シーンを知ることで、MCPの可能性がより鮮明に見えてくるはずです。
Claude Desktopで使う例

Claude.aiのデスクトップアプリ版であるClaude Desktopは、MCPクライアントを搭載した代表的なAIアプリケーションです。MCPサーバーと連携させることで、従来のAIチャットでは不可能だった機能が実現できるようになりました。
例えば、「この資料を要約して」という一般的なリクエストを考えてみましょう。従来のAIチャットでは、ユーザーが資料の内容をコピー&ペーストするか、ファイルをアップロードする必要がありました。文字数制限もあり、大きなドキュメントは部分的にしか処理できませんでした。
しかしMCPを活用したClaude Desktopでは、次のような進化が実現します。
・Filesystem MCPとの連携により、ユーザーのローカルファイルシステムにアクセスできる
・「私のデスクトップにあるQ1事業報告書.pdfを要約して」という指示だけで処理可能
・10ページ、100ページの大きなファイルでも全体を読み込み、包括的な要約が可能
・特定の章や部分だけを詳しく分析することも可能(「第3章の財務状況について詳しく説明して」など)
実際にユーザーがやり取りするのは、「この資料を要約して」という簡単な指示だけです。裏側では、MCPが複雑な処理を行い、AIが資料全体を理解した上で要約を作成します。この体験は、人間のアシスタントに仕事を依頼するような自然さを持っています。
プログラミング学習での活用
プログラミングの学習や開発において、MCPを活用したAIツールは非常に強力なサポートになります。特に最近エンジニアの間で人気急上昇中の「Cline」などのコーディングAIエージェントは、MCPを活用して学習体験を向上させています。
従来のAIコーディングアシスタントでは、ユーザーが質問するコードをコピー&ペーストする必要がありました。また、AIはコードの動作を実際に確認することができないため、理論的な説明にとどまることが多かったのです。
MCPを活用したプログラミング学習では、次のような進化が見られます。
・GitHub MCPとの連携:「このリポジトリのコードを分析して」と指示するだけで、オープンソースプロジェクトの全体構造を理解して説明可能
・ファイルシステムMCPとの連携:ローカルの開発環境にあるコードに直接アクセスして分析
・コード実行環境との連携:「このコードを実行するとどうなる?」という質問に対して、実際にコードを実行して結果を説明
特に初心者プログラマーにとって、この機能は学習効率を大幅に向上させます。「このコードの動作原理を説明して」「なぜこのエラーが発生するの?」といった質問に、AIが実際のコードを参照しながら回答してくれるからです。
例えば、Clineでは「MCP Servers」ボタンを押すだけで、様々なMCPサーバーを簡単に追加でき、GitHub連携やファイルシステム連携などの機能を即座に使えるようになります。
SlackやGoogleドライブと連携
ビジネスシーンにおいても、MCPを活用したAIアシスタントは大きな可能性を秘めています。特にSlackやGoogleドライブなど、多くの企業で日常的に使われているツールとの連携は、業務効率を劇的に向上させる可能性があります。
SlackとMCPを連携させることで、AIアシスタントは次のようなことができるようになります。
・過去のチャット履歴を検索:「先月のプロジェクトXについての議論をまとめて」
・チャンネルの会話を分析:「このチャンネルで最も頻繁に議論されているトピックは?」
・自動的に返信や投稿:「毎週月曜に進捗状況を聞いて、結果をまとめて#weekly-reportチャンネルに投稿して」
同様に、GoogleドライブとのMCP連携では下記の例があげられます。
・社内ドキュメントの検索:「製品Xに関する最新の資料を探して」
・ドキュメントの作成と編集:「先週のミーティングノートを基に議事録を作成して」
・複数文書の横断分析:「過去6ヶ月の月次報告書から売上トレンドを分析して」
これらの機能は、単にAIがチャットで回答するだけでなく、実際の業務システムと連携して作業を行うことで、真の「AIアシスタント」としての価値を生み出します。特に情報検索や定型業務の自動化において大きな時間節約になるでしょう。
自分の知識をAIに教えて専門アシスタントを作る
MCPのもう一つの強力な活用法は、自分の専門知識や組織固有の情報をAIに提供して、特定の目的に特化したアシスタントを作ることです。
従来のAIモデルは、一般的な知識は持っていても、特定の組織や専門分野の詳細な情報は持っていません。例えば、「私たちの会社の有給休暇の申請方法は?」といった質問には答えられませんでした。
MCPを活用すると、以下のような専門アシスタントを作ることができます。
・社内規定アシスタント:社内の就業規則、マニュアル、FAQなどと連携し、「育児休暇の申請手順は?」「経費精算のルールは?」といった質問に即座に回答
・製品情報アシスタント:自社製品の仕様書、マニュアル、Q&Aなどと連携し、カスタマーサポートや営業担当者をサポート
・専門分野アドバイザー:特定の専門領域(法律、医療、財務など)のデータベースと連携し、専門家の判断をサポート
例えば、法律事務所がMCPを活用すると、過去の判例データベースや法律文書と連携したAIアシスタントを作成できます。このアシスタントは「この状況に関連する判例は?」という質問に、適切な判例を即座に引用しながら回答できるようになります。
これにより、AIは単なる一般的な質問応答ツールから、組織の知識を活用した「専門家のアシスタント」へと進化するのです。
複数のアプリを横断して作業してくれるAI
最も革新的なMCP活用例の一つは、複数のアプリケーションやサービスを横断して一連の作業を自動化することです。これは「クロスアプリケーション統合」と呼ばれる分野で、MCPによって大きく進展する可能性があります。
従来のAIは単一のアプリケーション内でしか動作できず、複数のサービスをまたいだ作業フローを自動化することは困難でした。しかしMCPを使うと、異なるサービス間での連携が可能になります。
例えば、次のような一連の作業を自動化できるようになります。
「週次売上レポートを作成して」というリクエストに対して:
・データベースMCPを使って販売データを取得
・分析ツールMCPを使ってデータを集計・分析
・ドキュメント作成MCPを使ってレポートを作成
・メール送信MCPを使って関係者に配布
「競合他社の最新情報をまとめて」というリクエストに対して:
・ウェブ検索MCPを使って競合企業に関する最新ニュースを検索
・Fetch MCPを使って関連ウェブページの内容を取得
・テキスト分析MCPを使って重要情報を抽出
・Slack MCPを使って結果を特定のチャンネルに投稿
これは、AIがまさに「仕事の流れ全体」を理解し、必要に応じて適切なツールを選択しながら課題を解決する能力を持つことを意味します。ユーザーにとっては、複雑なタスクも簡単な自然言語指示だけで実行できるようになり、「AIエージェント」という言葉が真の意味を持つようになるでしょう。
このクロスアプリケーション統合こそ、MCPによってもたらされる最も大きな変革の一つと言えるかもしれません。様々なサービスを横断して作業できるAIは、私たちの働き方を根本から変える可能性を秘めているのです。
MCPを使ってみたい人向けのガイド

ここまでMCPについて理解を深めてきたところで、「実際に使ってみたい!」と思った方も多いのではないでしょうか。このセクションでは、MCPを実際に試してみる方法や、開発者向けの簡単な実装例、そして今後の展望について紹介します。
すぐに試せるMCP対応のアプリやサービス
MCPを使ってみたいけれど、どこから始めればいいのかわからない方のために、すぐに試せるMCP対応のアプリやサービスを紹介します。MCPは「クライアント側」(MCPツールを使う側)と「サーバー側」(MCPツールを提供する側)の両方があります。
クライアント側(MCPを使う側)
・Claude Desktop
Anthropicが提供するClaudeのデスクトップアプリ版です。設定画面からMCPサーバーの場所を指定するだけで、様々なツールをClaudeから利用できるようになります。公式サイトからダウンロード可能です。
Claude公式サイトはこちら
・Cline
VS Codeの拡張機能として提供されている人気のコーディングAIエージェントです。「MCP Servers」ボタンからサーバーを簡単に選択でき、マーケットプレイスから様々なMCPサーバーを追加できます。VS Code拡張機能マーケットプレイスからインストールできます。

・Amazon Bedrock エージェント
AWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」でも、Inline Agent SDKを使ってMCPとの連携が可能になりました。コード上でAIエージェントを定義するときにMCPクライアント機能を追加できます。
サーバー側(MCPを提供する側)
・Brave Search MCP
Brave検索のAPIを活用したウェブ検索機能を提供するMCPサーバーです。AIに最新の情報を検索させたい場合に便利です。
GitHubから入手できます。
・Fetch MCP
ウェブページの内容を取得・参照できるMCPサーバーです。特定のサイトの情報をAIに分析させたい場合に役立ちます。
GitHubで公開されています。
・Filesystem MCP
ローカルファイルの操作機能を提供するMCPサーバーです。AIにファイルの読み書きをさせたい場合に使用します。アクセス範囲を設定できるので安全に利用できます。
GitHubで公開されています。
・Playwright MCP
Microsoftのテスト自動化ライブラリ「Playwright」を利用したMCPサーバーで、ブラウザの自動操作機能を提供します。AIにウェブサイトの操作を任せたい場合に便利です。
GitHubで入手可能です。
・AWS MCP Servers
AWS公式が提供するMCPサーバー群です。AWS関連のサービス(ドキュメント検索、コスト分析、CDKコード分析など)と連携する機能を提供します。
GitHubで公開されています。
これらのツールは基本的にGitHubで公開されており、簡単な手順で起動できるようになっています。特にClineのマーケットプレイスを使うと、ワンクリックで様々なMCPサーバーを追加できるので、初心者にもおすすめです。
今後MCPはどんなふうに広がっていく?
MCPは比較的新しい技術規格ですが、その可能性と利便性から、今後急速に普及していくことが予想されます。MCPの未来について、いくつかの展望を紹介します。
【開発ツールとの統合拡大】
現在、一部のIDE(Clineなど)がMCPをサポートし始めていますが、今後はより多くの開発ツールがこの標準を採用すると予想されます。GitHub、GitLab、JIRAなどのコード管理・プロジェクト管理プラットフォームとの連携が進めば、開発ワークフローの効率化が期待できます。
例えば、「このPRのコードレビューをして」と指示するだけで、AIがリポジトリの内容を分析し、適切なフィードバックを提供できるようになるでしょう。
【企業内システムとの連携】
多くの企業では、社内文書、ナレッジベース、チケット管理システム、CRMなど、様々な独自システムが存在します。これらのシステムとMCPを連携させることで、企業特有のコンテキストを理解したAIアシスタントの構築が容易になるでしょう。
特に注目すべきは、セキュリティの観点です。MCPの標準化されたアクセス制御メカニズムにより、機密情報へのアクセスを適切に管理しながらAIを活用できる点は、企業にとって大きなメリットとなります。
【相互運用性の向上】
現在のAIエコシステムでは、各プラットフォームやツールが独自のインターフェースを持っており、連携が難しい状況です。MCPが広く採用されれば、異なるAIモデルやツール間の相互運用性が向上し、開発者はより柔軟にシステムを構築できるようになります。
例えば、特定のタスクにはClaude、別のタスクにはGPT-4が適している場合、両方のモデルを同じMCPインターフェースで利用できれば、最適なAIを選択しやすくなります。
【現実的な課題】
もちろん、MCPの普及には課題もあります。新しい技術標準の採用には時間がかかりますし、既存システムとの統合にはコストがかかります。また、大手AI企業がそれぞれ独自の標準を推進する可能性もあり、業界全体での合意形成が必要です。
さらに、MCPを活用するためには、開発者がプロトコルの仕様を理解し、適切に実装する必要があります。この学習コストも、普及の速度に影響するでしょう。
【所感】
MCPによってAIが自律的に外部システムと連携し、情報を取得・操作することが可能になるため、人間の単純作業が減少し、より創造的な作業に集中できるようになります。
また、MCPの導入障壁の低さも魅力的です。公開されているMCPサーバーのGitHubリポジトリに書かれているサーバー起動コマンドを実行するだけですぐに利用でき、導入後はAIが自律的にツールを選択・操作するため、特に意識的に操作する必要がありません。
このように、MCPはAIツールの連携を劇的に簡単にする技術として、今後のAI開発において非常に重要な役割を果たすことが期待されています。まだ始まったばかりのエコシステムですが、その可能性は無限大です。
まとめ:MCPで広がるAIの新しい使い方
MCPは生成AIと外部ツールを簡単に連携させる技術規格で、「AI界のUSB充電器」とも呼ばれます。この技術により、AIは単なる質問応答ツールから、様々なシステムと連携して実際のタスクを実行できる「真のアシスタント」へと進化します。開発者はMCPに対応したツールを一度作れば多くのAIで利用可能になり、ユーザーは自分の好きなツールでAIを強化できます。すでにClaude Desktop、Clineなどが対応し始めており、今後AIの活用範囲がますます広がっていくことが期待されます。MCPという新技術に注目して、AIとの新しい関わり方を探ってみてはいかがでしょうか。

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