海外リスティング広告の全て|市場調査のコツや運用ポイントを大公開!

 
 

この記事でわかること

  • 海外リスティング広告の仕組みと特徴
  • 海外マーケティングにおけるリスティング広告の位置づけ
  • 海外リスティング広告のメリットと注意点
  • 主要な海外リスティング広告プラットフォームの種類と活用方法
  • 海外リスティング広告を成功に導く5つのステップ
  • 効果的な運用のためのコピーライティングや入札設定のポイント
  • 大手企業の成功事例から学ぶ施策の工夫
  • 海外リスティング広告に取り組むことで得られるチャンス
谷田 朋貴

監修者プロフィール

谷田 朋貴

一橋大学卒業後、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、Web専業広告代理店を経て、株式会社電通デジタルに入社。アカウントプランナーとして国内の大手クライアントに対し、運用型広告を中心にデジタル全体のプロモーション施策の戦略立案・実行に従事。2023年12月、株式会社アドカルを創業。

海外進出を目指す企業にとって、現地の潜在顧客にリーチする手段として欠かせないのがリスティング広告です。本記事では、海外リスティング広告の基礎知識から、運用のコツ、成功事例まで、海外マーケティングに役立つノウハウを余すところなくお伝えします。

目次

リスティング広告の基本的な仕組みと特徴

リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンの検索結果画面に表示されるテキスト広告のことです。ユーザーが特定のキーワードで検索を行った際、そのキーワードに関連する広告が検索結果画面の上部や下部に表示される仕組みになっています。


リスティング広告の最大の特徴は、ユーザーの検索キーワードに応じて広告を配信できる点にあります。つまり、自社の商品やサービスに興味を持ちそうなユーザーに対して、的確なアプローチが可能だということです。また、広告の掲載順位は入札制で決まるため、高い効果を求めるほど広告費用は上がる傾向にありますが、逆に限られた予算内で効率的な集客を図ることもできます。

海外マーケティングにおけるリスティング広告の位置づけ

海外マーケティングにおいて、リスティング広告は非常に有効な手段の一つと言えます。その理由は大きく以下の3点が挙げられます。

ターゲティングの精度が高い

前述の通り、リスティング広告はユーザーの検索キーワードに応じて配信される広告です。つまり、自社の商品やサービスに興味を持ちそうなユーザーに対して、ピンポイントでアプローチできるということです。この点は、海外の潜在顧客を効率的に獲得する上で非常に重要なポイントと言えるでしょう。

リーチできる市場が広い

Googleは世界各国で圧倒的なシェアを誇る検索エンジンです。つまり、Google広告を活用すれば、言語や地域に関わらず、世界中のユーザーにリーチできる可能性があるということです。もちろん、ターゲットとする国や地域に合わせて、広告の最適化は必要になりますが、リスティング広告は海外展開の足がかりとして非常に有効な手段の一つと言えます。

効果測定が容易

リスティング広告では、クリック数や広告経由のコンバージョン数など、様々な指標を詳細に把握することができます。これにより、広告の効果を定量的に測定し、改善に繋げていくことが可能です。海外マーケティングにおいては、特に広告の効果検証とPDCAサイクルによる改善が重要になるため、リスティング広告の効果測定の容易さは大きなメリットと言えるでしょう。

このように、リスティング広告は海外の潜在顧客獲得に向けた有効な手段の一つですが、一方で言語の違いや現地の文化・商習慣など、クリアしなければならない課題も多いのが実情です。次の章では、海外リスティング広告のメリットとデメリットについて、より詳しく見ていきたいと思います。

海外リスティング広告を実施する上で、大きなメリットが3つあります。ここでは、それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。

海外リスティング広告の3つのメリット

1.ターゲティングの精度が高く効率的なユーザー獲得が可能

海外リスティング広告の最大のメリットは、やはりターゲティングの精度の高さにあります。ユーザーの検索キーワードに応じて広告を配信できるため、自社の商品やサービスに興味を持ちそうなユーザーに対して、ピンポイントでアプローチが可能です。

特に、海外マーケティングにおいては、膨大な数の潜在顧客の中から自社の商品・サービスに興味を持ってくれそうなユーザーを見つけ出すことが重要な課題となります。その点、リスティング広告であれば言語や地域でターゲティングを絞り込むことで、効率的にユーザー獲得を進められるのです。

加えて、GoogleやYahoo!では検索キーワードだけでなく、ユーザーの属性(デモグラフィック)、興味関心、行動パターンなど、様々なターゲティング条件を指定することが可能です。これにより、より精度の高いターゲティング配信が実現でき、広告の効果を大きく高めることができるでしょう。

2.運用コストを柔軟に調整でき予算の無駄遣いを防げる

リスティング広告のもう一つの大きなメリットが、運用コストの柔軟性です。リスティング広告では、1クリックあたりの単価(CPC)を調整することで、広告費用をコントロールすることができます。つまり、コストをかけてでも広告掲載位置を上位に表示させたり、逆に予算を抑えつつ最低限の露出を確保したりと、自社の事情に合わせて運用方法を柔軟に調整できるのです。

また多くの広告プラットフォームでは、1日の広告費用の上限を設定できる機能も用意されています。これにより、広告費用が際限なく跳ね上がってしまうリスクを回避することができます。特に海外マーケティングにおいては、為替変動などによる予期せぬコスト増加のリスクもあるため、このような予算管理機能の存在は非常に心強いと言えるでしょう。

海外マーケティングの初期段階では、どの程度の広告費用が必要になるか見通しを立てるのが難しいものです。その点、リスティング広告であればまず最小限の予算で開始し、徐々に予算を増やしながら最適化を図っていくことが可能です。これにより、初期投資リスクを大幅に軽減しつつ、効果の高い施策に予算を集中させていくことができるはずです。

3.即効性があり出稿後すぐに効果測定できる

海外マーケティングにおいては、施策の効果をいち早く把握し、改善につなげていくことが何より重要です。特に、現地の文化や商習慣が大きく異なる海外市場では、日本国内の感覚が通用しないケースも少なくありません。そのため、仮説検証のサイクルを素早く回していくことが求められるのです。

その点、リスティング広告は広告掲載後すぐに効果測定が可能であり、PDCAサイクルを高速で回していく上で非常に有効なツールだと言えます。広告プラットフォームの管理画面では、リアルタイムでクリック数や広告経由のコンバージョン数をトラッキングできるため、日々の改善に役立てることができるでしょう。

また、A/Bテストの実施により、より効果の高い広告文面やランディングページを素早く見つけ出すことも可能です。海外マーケティングにおいては、現地ユーザーの嗜好や反応を探りながら、広告施策を最適化していく必要がありますが、リスティング広告はまさにそのための強力なツールだと言えるでしょう。

海外リスティング広告には多くのメリットがある一方で、注意しなければならない点も存在します。ここでは、海外リスティング広告を実施する上での3つの注意点を解説します。

海外リスティング広告の3つの注意点

注意点1:運用型広告ゆえ手間とコストがかかる

海外リスティング広告の最大の注意点は、運用型広告である点です。つまり、ただ広告を出稿すればそれで終わりというわけではなく、常に運用の最適化を図っていく必要があるということです。
具体的には、広告キーワードの見直し、入札単価の調整、広告文面の改善など、継続的な運用改善が求められます。特に海外マーケティングにおいては、日々刻々と市場の状況が変化するため、常に最新の動向をキャッチし、広告運用に反映させていく必要があるのです。

また、運用面での工数が多くなるため、それに伴うコストの増加にも注意が必要です。特に海外の代理店などに運用を任せる場合、思わぬコスト負担が発生する可能性もあります。自社内にリスティング広告の運用ノウハウがない場合、まずは小規模から始めて徐々に体制を整えていくことが賢明でしょう。

注意点2:現地の商習慣への理解不足だと大きく効果を損なう

海外リスティング広告を実施する上で、現地の商習慣や文化への理解は欠かせません。たとえ言語の壁を越えられたとしても、ユーザーの感覚や習慣が理解できていなければ、広告効果は大きく損なわれてしまうでしょう。

例えば、ある国では割引価格の表示が広告への信頼を損ねるケースがあったり、特定の色使いが忌み嫌われていたりと、日本の常識が通用しない場合も少なくありません。ターゲットとする国や地域の商習慣をしっかりとリサーチし、広告施策に反映させる必要があります。
また、商品やサービスの訴求ポイントも国や地域によって大きく異なります。日本人の感覚では当たり前と思える機能が、現地のユーザーにとっては特別な価値として捉えられるケースもあるのです。現地のマーケットリサーチを通じて、自社の強みを再定義することが求められると言えるでしょう。

注意点3:競合他社との入札合戦に巻き込まれるリスク

海外の広告市場においても、自社だけでなく多くの競合他社がしのぎを削っています。特に市場規模が大きい国や、競争が激しい業界では、リスティング広告の入札単価が高騰するケースも珍しくありません。

そうした状況下では、いくら効果の高いキーワードであっても、広告費用対効果の面から出稿を断念せざるを得なくなることもあります。また、競合他社に広告掲載枠を取られてしまうと、自社の露出機会が大きく損なわれるリスクもあるのです。
こうしたリスクに対応するためには、競合サイトの動向を常にウォッチし、適切な入札戦略を練る必要があります。場合によっては、リスティング広告以外の施策、例えばSNS広告やディスプレイ広告などとの連携も視野に入れ、総合的な集客戦略を立てることが求められるでしょう。

ここからは、海外リスティング広告を配信できる主要プラットフォームについて解説していきます。それぞれのプラットフォームの特徴や強みを理解し、自社のマーケティング戦略に適したメディアを選択することが重要です。

海外リスティング広告を配信できる4つの主要プラットフォーム

Google広告の特徴と設定のポイント

海外リスティング広告を語る上で欠かせないのが、Google広告です。世界各国で圧倒的なシェアを誇るGoogleの検索エンジンに広告を掲載できるため、事実上どの国や地域でもユーザーにリーチできると言っても過言ではありません。

Google広告の特徴は、何と言ってもその精度の高さにあります。検索連動型広告に加えて、ユーザーの行動履歴などを元にしたオーディエンスターゲティング機能など、広告配信の高度なカスタマイズが可能となっています。また、動画広告やショッピング広告など、多様な広告フォーマットにも対応しています。

海外向けにGoogle広告を出稿する際は、言語や地域の設定を正しく行うことが重要です。また、現地の商習慣に合わせて広告文面を最適化したり、入札戦略を工夫したりするなど、きめ細かな運用設計が求められます。とはいえ、Google広告の管理画面は世界共通で使い勝手が良いため、国内の広告運用で培ったノウハウを海外展開に活かしやすいのも大きな利点と言えるでしょう。

Microsoft広告の活用方法

Google広告に次いで世界的なシェアを誇るのが、Microsoft(旧Bing)の検索連動型広告プラットフォームです。Microsoft広告は、Bingだけでなく、提携する他社の検索エンジンやパートナーサイトにも広告を配信できるため、Google広告とはまた異なるユーザー層へのリーチが期待できます。

Microsoft広告の管理画面は、Google広告との類似点も多いため、比較的導入が容易だと言えます。一方で、地域によってはBingの検索シェアが非常に小さいケースもあるため、費用対効果の見極めは慎重に行う必要があります。

また、Microsoft広告では LinkedIn や MSN など、Microsoft傘下の他メディアとの連携も視野に入れることができます。例えば、LinkedInの配信データを活用したオーディエンスターゲティング など、Google広告にはない独自の機能にも注目です。自社のターゲット像に合致するようであれば、Microsoft広告の活用も十分に検討に値するでしょう。

中国で効果を発揮するBaidu広告

中国市場でリスティング広告を展開する際に欠かせないのが、Baidu広告です。Googleが規制されている中国において、Baiduは70%超の圧倒的な検索シェアを誇っています。つまり、Baidu広告なしに中国でのマーケティング展開は考えられないと言っても過言ではありません。

Baidu広告の特徴は、中国の検索市場に特化している点にあります。中国語の文字入力や音声検索など、中国人ユーザーの検索行動に適した機能が充実しています。また、Baidu独自のオーディエンスターゲティングや、動画プラットフォームのiQiyi(アイチーイー)と連携した動画広告配信など、中国市場ならではの広告手法が利用可能です。

一方で、Baidu広告を日本から出稿するにはハードルもいくつか存在します。まず、中国の法規制を理解し、必要な許認可を取得する必要があります。また言うまでもなく、広告運用を担当するスタッフは中国語に堪能である必要があります。こうした点から、現地の代理店などと連携し、ノウハウを補完していくことが求められるでしょう。

ロシア圏ではYandex広告が主流

ロシアを含む旧ソビエト連邦諸国では、Yandexが検索エンジンのトップシェアを誇っています。そのため、これらの地域でリスティング広告を展開する際は、Yandex広告の活用が欠かせません。
Yandex広告の特徴は、ロシア語圏のユーザーに特化した機能の充実さにあります。キリル文字の形態素解析など、言語処理の技術はGoogleにも引けを取りません。また、Yandexが提供するメールサービスやマップサービスなどとの連携により、ユーザーの属性に合わせたターゲティング配信も可能となっています。

一方で、Yandex広告の管理画面はロシア語表記であるため、言語面でのハードルは低くありません。また、ロシアを含む旧ソビエト連邦諸国特有の商習慣やユーザー嗜好への理解も欠かせません。現地パートナーとの協業など、ノウハウの補完が求められる分野だと言えるでしょう。

ここからは、海外リスティング広告を成功に導くための5つのステップについて解説します。自社の強みを再定義し、PDCAサイクルを回すことで、着実に成果を積み上げていきましょう。

海外リスティング広告を成功に導く5つのステップ

ステップ1:自社サービスのポジショニングを再確認する

海外リスティング広告に取り組む前に、まず自社の製品・サービスが現地市場でどのように受け止められるかを再確認することが重要です。日本国内で確立したポジショニングが、そのまま通用するとは限りません。

現地のマーケットリサーチを通じて、自社の強みを再定義する必要があります。競合他社の動向を分析し、自社だけが提供できるユニークな価値を明確にすることが求められるのです。その上で、ターゲットとする国や地域の人々に刺さるメッセージを開発していくことが重要となります。

例えば、日本国内では当たり前の機能も、現地では大きな付加価値として受け止められるケースがあります。逆に、日本人の感覚では不要と思える機能が、実は現地ユーザーにとって重宝されることもあるのです。自社サービスの新たな魅力を発見し、現地の人々に訴求力のあるコンセプトを打ち出していくことが肝要だと言えます。

ステップ2:ペルソナ設計で見込み客像を明確化する

自社サービスのポジショニングが定まったら、次はターゲットとなる見込み客像(ペルソナ)を具体的に設計する必要があります。リスティング広告はターゲティングの精度が高い反面、ペルソナ設計を誤ると費用対効果が大きく損なわれる恐れがあります。

ペルソナ設計においては、ターゲットとする国や地域の人口統計データなどを活用しながら、自社サービスに興味を持ちそうな属性を可能な限り詳細に想定することが重要です。年齢や性別、職業、趣味嗜好など、ペルソナを具体的にイメージできるよう、プロフィールを作り込んでいきましょう。

また、ペルソナを単に属性の集合体として捉えるのではなく、現地の生活文化や習慣、価値観などにも目を向ける必要があります。広告メッセージを検討する際、ペルソナになりきって考えることが求められるのです。

特に海外マーケティングでは、異文化コミュニケーションのセンスが問われます。ペルソナの心情に寄り添いながら、共感を呼ぶメッセージを発信できるよう、ペルソナ理解を深めていくことが欠かせません。

ステップ3:広告予算は市場規模を見据えて設定する

海外リスティング広告の予算設計においては、ターゲット市場の規模をしっかりと見極める必要があります。国内の感覚をそのまま当てはめては、広告費用が際限なく膨らむリスクがあるのです。
まず、広告出稿を検討している国や地域の人口規模を確認しましょう。次に、自社の製品・サービスに対する潜在的な需要がどの程度見込めるかを、市場調査データなどから推し量ります。こうした基礎的な情報を踏まえた上で、シェアや売上の目標値を設定し、それを実現するために必要な広告予算を算出するのです。

また、リスティング広告の入札相場は国や地域によって大きく異なります。競合サイトの出稿状況などを分析し、適正な入札単価の水準を見極めることも重要です。場合によっては、現地通貨ベースでの価格設定など、為替変動のリスクヘッジも検討する必要があるでしょう。

いずれにしても、リスティング広告は運用型広告である以上、当初の予算計画通りに行かないケースは珍しくありません。PDCAサイクルを回しながら、仮説検証と軌道修正を繰り返すことが求められます。初期予算は控えめに設定し、手応えを見ながら徐々に増やしていくのが賢明だと言えます。

ステップ4:適切なKPIを設定し効果測定の仕組みを作る

海外リスティング広告の成否を左右するのが、適切なKPI(重要業績評価指標)の設定です。何を目指して広告施策を実施するのか、その目的を数値指標に落とし込み、効果検証の仕組みを構築することが求められます。

一般的なリスティング広告のKPIとしては、クリック数、クリック率(CTR)、コンバージョン数、コンバージョン率(CVR)、1コンバージョンあたりの獲得単価(CPA)などが挙げられます。自社の事業特性に合わせて、重視すべき指標を定めましょう。

また、ウェブサイトの分析ツールを活用し、サイト訪問者の行動を詳細に追跡することも重要です。ページ滞在時間や離脱率、回遊状況など、ユーザー行動を分析することで、広告の質や問題点を可視化することができるのです。
特に海外マーケティングでは、言語や商習慣の違いから、思わぬ部分でユーザー体験の齟齬が生まれることがあります。データ分析を通じて問題点を発見し、仮説を立てて改善につなげるPDCAサイクルが欠かせません。

効果測定の仕組み作りにおいては、自社だけでなく外部パートナーのリソースも活用することを考えましょう。海外の広告代理店やコンサルティング会社などと連携することで、現地市場に即した効果検証手法を導入することが可能になります。

ステップ5:PDCAサイクルを高速で回しスピード感を持って最適化する

海外リスティング広告の運用においては、スピード感を持った施策の最適化が何より重要です。市場の反応を素早くキャッチし、改善につなげるPDCAサイクルを効率良く回す仕組み作りが求められるのです。

まず、広告運用の担当者を明確に定め、責任と権限を付与することが大切です。運用ノウハウを担当者個人の裁量に委ねるのではなく、チームで知見を共有し、組織的な学習を進めることが肝要と言えます。

また、現地法人や代理店との役割分担を明確化することも重要です。リアルタイムの入札調整など、高速なPDCAサイクルを回す上では、現地に根差した運用チームの存在が欠かせません。一方で、キャンペーンの方向性判断など、戦略的意思決定は本社サイドでコントロールすることも求められます。遠隔コミュニケーションの仕組みづくりがカギを握ると言えるでしょう。

さらに、運用データの一元管理と、レポーティング業務の効率化も重要なポイントです。海外の複数市場にまたがる広告データを集約し、運用担当者の意思決定に活かす仕組みを整備することが求められます。できる限り自動化を進め、担当者がより戦略的な意思決定に注力できる環境を作ることが理想的だと言えます。

海外市場の動向は日々刻々と変化します。変化の兆しを敏感に察知し、スピーディーに施策を打ち手を打っていくことが何より重要です。PDCAサイクルを高速で回す組織体制と、データドリブンな意思決定の仕組みを構築することが、海外リスティング広告の成功の鍵を握ると言えるでしょう。

ここからは、海外リスティング広告の運用ノウハウについて、より具体的な観点から解説していきます。特に重要なポイントは、現地の文化や習慣に合わせたきめ細かな施策の実行だと言えます。

海外リスティング広告の運用ノウハウ|コピーライティングから入札単価設定まで

ビジネス慣習の違いを意識したキーワード選定とマッチタイプ設定

海外リスティング広告において、適切なキーワードを選定することは非常に重要です。現地の検索習慣を理解し、ユーザーの行動に即した言葉選びが求められます。
例えば、ビジネスシーンでの挨拶の仕方一つとっても、国によって大きな違いがあります。「How are you?」が一般的な英語圏に対し、中国では「你吃饭了吗?(ご飯食べた?)」が日常的に用いられるなど、言葉のニュアンスをつかむことが大切です。

こうした違いは、検索キーワードにも大きく影響します。日本語の直訳キーワードでは、現地のユーザー心理を捉えられないケースがほとんどです。自社の製品・サービスに関連し、かつ現地の人々が日常的に使う言葉を吟味しながら、キーワードを選定することが重要だと言えます。

また、マッチタイプの設定にも注意が必要です。完全一致、フレーズ一致、部分一致など、キーワードと検索クエリの一致度合いを調整することで、広告の効率を高めることができます。現地の言語特性を踏まえたマッチタイプの設計により、無駄な広告費の抑制と、適切なユーザー獲得を実現するのです。

広告文の作り方|ネイティブの感覚を取り入れたコピーライティング

海外リスティング広告を成功に導く上で、コピーライティングの巧拙は非常に重要な要素です。単に日本語の広告文を翻訳するだけでは、現地ユーザーの心を動かすことはできません。広告文には、現地の人々の感覚を取り入れたネイティブ感覚が求められるのです。

コピーライティングにおいては、まず現地の広告トレンドを押さえることが大切です。同業他社の広告文を分析し、どのようなフレーズや訴求方法が一般的に用いられているかを理解しましょう。その上で、自社の製品やサービスの魅力を、現地の人々に響く言葉で表現することが求められます。

また、現地の言葉の言い回しやニュアンスを適切に理解することも欠かせません。一つの単語でも、国や地域によって意味合いが異なることは珍しくありません。ネイティブスピーカーのチェックを受けるなど、言葉の使い方の適否は慎重に見極める必要があります。

加えて、数字の使い方など、一見些細な点にも注意が必要です。日本語の広告文では「〇〇円引き」といった表現がよく用いられますが、英語圏では「Save $○○」と表現する方が自然だったりします。現地の慣習を押さえ、違和感のない表現を心がける姿勢が何より大切だと言えるでしょう。

効果的なキャンペーンと広告グループの設計方法

海外リスティング広告では、キャンペーンや広告グループの設計も重要なポイントとなります。ターゲットとする国や地域、言語などに応じて、適切な広告の組み立てを考える必要があります。
一般的には、国ごと、言語ごとにキャンペーンを分けることが望ましいと言えます。ターゲットユーザーの属性や検索傾向は、国や言語によって大きく異なるためです。それぞれの特性に合わせ、出稿地域や予算配分などを最適化することが求められます。

また、広告グループの構成にも工夫が必要です。関連性の高いキーワードをグループ化し、それぞれに適したテキスト広告を設定することが重要だと言えます。ユーザーの検索意図に沿った広告を表示することで、クリック率や conversion rate を高めることができるのです。

さらに、PCやモバイルなど、デバイスに応じた広告出稿の最適化も検討しましょう。国によってはモバイルの普及率が極めて高く、PCでの検索が主流の日本とは大きく事情が異なります。ユーザーの検索環境を踏まえ、デバイスごとに適切な広告を配信することが求められます。

シーズナリティを捉えた広告の出し方と予算配分

海外市場においては、日本とは異なる独特の季節要因(シーズナリティ)が存在します。現地の商習慣や生活文化を理解し、旬なタイミングで広告を打つことが何より重要だと言えます。
例えば、欧米諸国ではクリスマスや感謝祭、バレンタインデーなど、ギフト需要が高まる時期があります。また、イスラム圏の国々では、ラマダン(断食月)の前後にショッピング需要が増加する傾向にあります。こうした現地特有のイベントに合わせて、広告の出稿を強化することが求められるのです。

また、旅行業界であれば夏休みシーズン、ファッション業界であれば新シーズンの立ち上がり時期など、業界特有のシーズナリティにも目を配る必要があります。競合サイトの動向を注視しながら、需要が高まるタイミングを的確に捉えた広告展開が欠かせません。

シーズナリティを捉えた広告運用を行う上では、予算配分の最適化も重要なポイントとなります。旺盛な需要が見込める時期には思い切った予算投下を行う一方、閑散期には広告出稿を絞り込むなど、メリハリのある予算管理が求められます。年間の需給変動を見越した、トータルでの予算最適化が理想だと言えるでしょう。

競合サイトを分析してCPCの最適値を見つける

海外リスティング広告の入札戦略を考える上で、競合サイトの動向分析は欠かせません。とりわけ、クリック単価(CPC)の適正水準を見極めることが重要だと言えます。
まず、競合他社の広告の掲載状況を確認します。自社が狙うキーワードで、どのような広告主がどの程度の順位で広告を掲載しているかを調べるのです。これにより、競合の広告戦略や、市場の競争度合いを推し量ることができます。

次に、競合サイトのランディングページを分析します。広告を経由してたどり着くページの内容や、ユーザビリティの水準などを確認することで、競合他社の広告が持つ訴求力を評価するのです。ページの完成度が高い競合ほど、高いCPCで入札していると考えられます。

こうした分析を通じて、自社の広告が目標とすべきCPCの水準を見極めましょう。CPCが高すぎれば費用対効果が損なわれ、逆に低すぎれば広告の掲載機会を逸してしまう恐れがあります。競合の動向を睨みつつ、自社の予算や目標に照らし合わせ、最適なCPC設定を導き出すことが求められます。
また、アドオークション形式のリスティング広告では、状況に応じた柔軟な入札設定が欠かせません。曜日や時間帯によって競争環境は刻一刻と変化するため、機を逸することなく臨機応変な対応を取ることが重要だと言えます。競合の動きを常にウォッチしながら、機動力のある運用施策を心がけましょう。

ランディングページ最適化のポイントと考え方

リスティング広告の効果を最大化する上で、広告を経由した先のランディングページの最適化は非常に重要なポイントとなります。折角、広告をクリックしてもらっても、ユーザーの関心を引き付けられなければ意味がありません。

海外マーケティングにおけるランディングページ最適化では、まず現地の人々の考え方や感覚を理解することが大切です。ページデザインやコピーライティングにおいて、日本人の感覚では「分かりやすい」「読みやすい」と思えることが、現地のユーザーにとっては「ごちゃごちゃしている」「重要なポイントが分からない」と感じられるケースは珍しくありません。
したがって、ランディングページを最適化する際には、現地のウェブデザインのトレンドを抑えておくことが重要だと言えます。どのようなサイト構成やレイアウトが一般的で、ユーザーがどこに注目する傾向にあるのかを把握しておくことが求められるのです。

また、ページ内のコンテンツについても、言語面での配慮が欠かせません。グローバルサイトの制作においては、現地の言葉で違和感なく理解できるコピーライティングはもちろんのこと、文化的な背景を踏まえた上での表現の工夫が求められます。

例えば、日本語のウェブサイトでは社歴の長さをアピールすることが一般的ですが、新興国などでは企業の歴史よりも、イノベーティブな製品・サービスを打ち出す方がインパクトがあったりします。ターゲットとする国や地域の人々が何を重視し、何に価値を見出すのかを考えながら、ページ内容を構成することが肝要だと言えます。

ランディングページの最適化は、広告を出稿する前から入念に行うことが理想的です。A/Bテストなどを活用しながら、より高い成果につながるページを追求していくことが重要だと言えます。PDCAサイクルを回しながら、継続的な改善を進めることが海外リスティング広告成功のカギを握るでしょう。

ここからは、海外リスティング広告で成果を上げている企業の実例を紹介しながら、成功施策のポイントを探っていきます。大手企業の事例から学ぶことで、自社の取り組みに活かすヒントが見えてくるはずです。

事例1:北米で急成長したD2Cブランドのリスティング広告活用法

1つ目の事例は、北米で急成長を遂げたD2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)のアパレルブランドの例です。自社ECサイトを中心とした販売モデルにおいて、GoogleやBingの検索連動型広告が集客の大きな柱となっています。

この企業の施策で特徴的なのは、商品特性に適した検索キーワードの緻密な選定です。取り扱う商品が多岐にわたることから、アイテムごとに購買者の特性を詳細に分析。「スリムフィットチノパン」「オーガニックコットンパーカー」など、具体的な商品名や属性を組み合わせたロングテールキーワードを数多く設定しているのです。

また、ファッションという商品特性を踏まえ、シーズンごとの需要変動を先回りした広告運用も行っています。過去の販売データを分析することで、新商品の投入時期や、セールの開始タイミングを最適化。それに合わせてリスティング広告の予算配分を機動的に組み替えることで、費用対効果の高い広告展開を実現しているのです。
さらに、広告を出稿するだけでなく、ランディングページの最適化にも力を注いでいるのがポイントです。サイトに到達したユーザーをスムーズに購買に導くため、ページ内の導線を整理。見込み客の関心を惹きつけるコピーライティングや、ページ表示速度の高速化などにも注力し、高い広告効果につなげています。リスティング広告とサイト設計の緊密な連携が、成功の背景にあると言えるでしょう。

事例2:中国旅行客向けOTA(オンライン旅行会社)のBaidu広告戦略

続いては、訪日中国人旅行客を主要ターゲットとするOTA(オンライン旅行会社)による、Baidu広告の活用事例を紹介します。
この企業では、中国の検索エンジン市場で圧倒的なシェアを誇るBaiduに的を絞った広告展開を行っています。中国人ユーザーの検索行動や嗜好性を分析した上で、Baiduのマーケティングツールを効果的に活用。より精度の高いターゲティング配信を実現しているのです。

例えば、Baiduが提供するユーザーの行動ターゲティングツールでは、旅行関連サイトの閲覧履歴を持つユーザーに対し、自社サイトへの誘導広告を配信。また、百度旅游など、Baiduが運営する旅行関連のバーティカルサイトとタイアップし、より関心の高いユーザー層にリーチすることにも成功しています。
加えて、Baiduの検索連動型広告においても、中国人ユーザーの感覚に合ったキーワード選定と広告文の工夫が光ります。中国人の間で人気の観光スポットや、現地のトレンドキーワードを取り込むことで、広告の注目度とクリック率を引き上げているのです。

また、訪日旅行と検索需要が高まる春節(旧正月)の時期には、広告予算を集中的に投下。競合他社に先んじて露出を高めることで、集客数の増加を実現しています。中国の旅行市場特有のシーズナリティを捉えた、機動的な広告運用が功を奏していると言えるでしょう。

ここまで海外リスティング広告の特徴や実践方法について詳しく解説してきました。最後に、海外リスティング広告に取り組むことで得られる3つのチャンスについて整理し、まとめとします。

まとめ:海外リスティング広告がもたらす3つのチャンス

チャンス1:海外の潜在顧客を効率的に獲得できる

海外リスティング広告に取り組む最大のチャンスは、やはり海外の潜在顧客を効率的に獲得できる点にあります。自社の製品・サービスに関心を持ちそうなユーザーに対し、適切なタイミングでアプローチできる広告手法だと言えます。

とりわけ、海外展開の初期段階では現地での知名度も低く、コストをかけて広く認知を獲得するのはハードルが高くなりがちです。その点、リスティング広告であれば検索需要が見込めるところから狙いを定めてアプローチできるため、限られたリソースを有効活用しながら着実に顧客基盤を拡大することが可能となるのです。

チャンス2:海外進出の足がかりとしてマーケット感覚が身につく

海外リスティング広告に取り組むことで得られるのは、海外の顧客獲得だけではありません。広告の効果検証を通じて、現地マーケットの肌感覚や、顧客の嗜好性を知ることができるのも大きなチャンスだと言えます。

リスティング広告の運用を通じて蓄積したデータは、商品開発やブランディング戦略など、マーケティングの様々な局面で活用できる価値ある情報資産となります。例えば、よく検索されるキーワードを分析することで、現地のトレンドや、競合他社の動向を知ることができるでしょう。
こうして得られた知見やノウハウは、その国や地域での事業展開の足がかりとして大いに役立つはずです。リスティング広告の効果検証に真摯に取り組むことが、海外マーケットでの成功確度を高めることにつながると言えます。

チャンス3:国内にはない新たなビジネスチャンスが見つかる

海外マーケットに目を向けることで、国内市場では見えていなかった新たなビジネスチャンスを発見できる可能性もあります。
海外の消費者の価値観やライフスタイルに触れることで、日本市場とは異なる斬新な製品アイデアが浮かぶかもしれません。あるいは、日本国内では強豪ぞろいで参入が難しい業界でも、海外では狙える隙間市場が見つかるケースもあるでしょう。

リスティング広告は、こうした「気づき」を得るための格好の観察手段だと言えます。現地の検索需要を分析したり、競合サイトの広告クリエイティブに触れたりすることで、新たなビジネスアイデアが生まれてくる可能性は大いにあるのです。

海外リスティング広告は、海外の潜在顧客にダイレクトにアプローチできるだけでなく、自社の視野を広げ、事業の可能性を押し広げるチャンスにもなり得ます。ぜひ前向きに捉え、海外マーケットへの挑戦を検討されてみてはいかがでしょうか。

以上、海外リスティング広告の入門ガイドを終わります。本記事が皆様の取り組みを後押しする一助となれば幸いです。


海外リスティング広告の運用にお困りではないですか?

株式会社アドカルは海外リスティング広告の運用に強みを持ったマーケティング支援企業です。

貴社のマーケティングパートナーとして、少数精鋭で担当させていただきます。

・Web広告を出稿してみたい
・自社で運用しているが、効果が出ないので代理店を探している
・成果の出るWeb集客施策を行って集客を拡大したい

上記のようなお悩みをお持ちでしたら是非私たちにご相談ください。株式会社アドカルは貴社の集客を最大化するために「消費者理解の徹底」と「戦略立案」を大事にしております。

また、弊社は創業以来、成果が悪いことを理由にお客様との契約が解除になったことはございません。

詳しくは下記よりお問い合わせください。貴社に最適なプランをご提案させていただきます。