DeepSeek R1とは?安全性や特徴、性能、注意点を解説

 
 

この記事でわかること

  • DeepSeek R1の基本概要と特徴
  • DeepSeek R1の特徴や使い方
  • DeepSeek R1の安全性

谷田 朋貴

一橋大学卒業後、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、Web専業広告代理店を経て、株式会社電通デジタルに入社。国内大手クライアントに対して、デジタル全体のプロモーション施策の戦略立案・実行に従事。また、生成AIを活用した自社業務の効率化にも取り組む。2023年12月、生成AIを活用した業務効率化支援を行う株式会社アドカルを創業。

AI業界に革新的な進展をもたらすDeepSeek R1が注目を集めています。OpenAIのo1モデルに匹敵する高い性能を持ちながら、オープンソースで提供されるこのAIモデルは、数学的推論やコーディングにおいて卓越した能力を発揮します。さらに、API利用料金がOpenAIの25分の1以下という低コストも特徴的です。本記事では、DeepSeek R1の基本的な特徴から、具体的な活用方法、導入時の注意点まで、実務での活用に必要な情報を総合的に解説します。

注目を集める中国発の最新AIモデル

DeepSeek R1は、中国のAI企業DeepSeekが開発した画期的な大規模言語モデル(LLM)です。このモデルは、特に推論能力に特化した設計となっており、従来のAIモデルとは一線を画す革新的な特徴を持っています。開発の基盤となったのは、同社の前モデルであるDeepSeek-V3であり、これをベースに大規模な強化学習(RL)を適用することで、飛躍的な性能向上を実現しました。

DeepSeek R1の主要な特徴として以下が挙げられます。

・強力な推論能力と数学的問題解決力を持つ
・MITライセンスによるオープンソース提供
・最大128Kトークンの長いコンテキスト処理が可能
・OpenAI o1シリーズと同等以上の性能を実現
・大幅に低コストなAPI料金体系を採用

OpenAIのモデルと同等以上の性能を実現

DeepSeek R1は、様々な標準的なベンチマークテストにおいて、OpenAIのo1モデルと同等、あるいはそれを上回る性能を示しています。特筆すべきは、数学や科学的推論の分野での卓越した能力です。

数学的能力の例として、AIME 2024(American Invitational Mathematics Examination)では79.8%という高い正答率を達成し、これはOpenAI o1-1217と同等のレベルです。さらに、MATH-500では97.3%という驚異的な正答率を記録し、これはo1-1217を上回る結果となっています。

プログラミングの分野でも、LiveCodeBenchで65.9%の正答率を達成し、Codeforcesでは2029というEloレーティングを獲得するなど、実用的な場面での高い性能を実証しています。また、幅広い知識理解を測るMMULでは90.8%という高スコアを記録し、汎用的な知識処理能力も備えていることを示しています。

DeepSeek R1が持つ5つの革新的な強み

DeepSeek R1は、従来の言語モデルとは一線を画す独自の強みを持っています。ここでは、このモデルが持つ5つの革新的な特長について、具体的なデータと実例を交えながら詳しく解説していきます。これらの強みは、実際の業務や研究開発における活用可能性を大きく広げる要因となっています。

高度な推論能力と数学的問題解決力

DeepSeek R1の最も際立つ特徴は、その卓越した推論能力です。特に、数学的問題解決において、人間のような思考プロセスを展開する能力を持っています。このモデルは、問題を段階的に分析し、自己検証や内省を行いながら、最適な解決策を導き出すことができます。

高度な推論能力を示す主要な指標:
・AIME 2024での79.8%の正答率の達成
・MATH-500における97.3%という驚異的な成績
・GPQA Diamondでの71.5%の正解率
・問題解決過程における自己修正能力の実証

優れたコード生成能力とプログラミング性能

プログラミングの分野においても、DeepSeek R1は卓越した能力を発揮します。コード生成能力は、実際のプログラミングコンテストの基準で評価されており、実用的なレベルに達しています。LiveCodeBenchでの65.9%という正答率は、OpenAI o1-1217を上回る成績です。また、Codeforcesでの2029というEloレーティングは、プロフェッショナルレベルのプログラミング能力を示しています。

幅広い知識と汎用的な応用力

MMULベンチマークでの90.8%という高スコアが示すように、DeepSeek R1は幅広い分野での知識を持ち合わせています。この知識は、質問応答、研究開発、コンテンツ作成など、多岐にわたる用途で活用できます。特に専門的な知識を要する分野での応用力は、実務での活用可能性を大きく広げています。

効率的な学習アーキテクチャ

DeepSeek R1の学習アーキテクチャは、独自の「GRPO(Group Relative Policy Optimization)」という強化学習アプローチを採用しています。このアプローチにより、計算コストを抑えながら効率的な学習を実現しています。さらに、「言語一貫性報酬」という革新的な仕組みを導入し、出力の質と安定性を向上させています。

オープンソースで低コストな利用環境

DeepSeek R1は、商用利用や改変が自由なMITライセンスの下で公開されています。さらに、API利用料金はOpenAIの同等モデルと比較して大幅に低く設定されています。最大128Kトークンの長文処理能力を持ち、WebUI、API、ローカル実行など、複数の利用形態に対応しているため、様々なニーズに柔軟に対応することができます。

DeepSeek R1の開発背景と技術革新

DeepSeek R1の開発は、AI分野における革新的なアプローチを象徴する重要な出来事です。このモデルは、従来の常識を覆す独自の開発手法と、効率的な学習プロセスによって生み出されました。その開発過程と技術的特徴について、詳しく見ていきましょう。

独自の強化学習アプローチ

DeepSeek R1の開発において最も革新的な点は、基本モデルに対して大規模な強化学習(RL)を直接適用したことです。従来のAIモデル開発では、まず教師あり学習(SFT)を行い、その後で強化学習を適用するのが一般的でした。しかし、DeepSeek R1では、この常識を覆し、新しいアプローチを採用しました。

このアプローチにおける重要な技術的革新は以下の通りです。

・GRPO(Group Relative Policy Optimization)の採用による効率的な学習
・価値モデルを必要としない独自の強化学習方式
・グループ内での複数出力の報酬比較による方策更新

効率的な知識転移と軽量化技術

DeepSeek R1の開発プロセスは、4つの重要なステージを経て完成に至りました。まず、基本モデルに対して強化学習を適用してDeepSeek R1-Zeroを開発。次に、少量のコールドスタートデータを用いた教師あり学習を実施し、その後、再度強化学習を適用。最後に、最終調整のための教師あり学習を行うという段階的なアプローチを取りました。

特筆すべきは、この過程で開発された知識蒸留技術です。DeepSeek R1の高度な推論能力を、より小さなモデルに効率的に転移させることに成功しました。この技術により、1.5Bから70Bまでの様々なサイズのDeepSeek R1-Distillモデルが生まれ、用途や環境に応じて最適なモデルを選択できるようになりました。

各Distillモデルは、それぞれQwen2.5やLlama3などの既存のオープンソースモデルをベースとしており、DeepSeek R1の知識を効率的に取り入れることで、高い性能と実用性を実現しています。この軽量化技術により、限られたリソースでも高度なAI機能を実装することが可能となり、AI技術の普及に大きく貢献しています。

DeepSeek R1は、複数の方法で利用することができ、それぞれのニーズや環境に応じて最適な選択が可能です。ここでは、主な利用方法について、具体的な手順とともに解説していきます。

主な利用方法には以下のものがあります。

・Webチャットインターフェース(chat.deepseek.com)
・API(platform.deepseek.com)
・ローカル環境での実行
・スマートフォンアプリ

次に画面上の「DeepThink」ボタンをオンにすることで、DeepSeek R1の機能を利用できるようになります。

Web検索機能との併用も可能で、より正確な情報を得ることができます。「Search」を押すと検索機能も活用できます。

API経由での利用は開発者向けのオプションとして提供されており、OpenAI互換のAPIを使用することができます。APIキーの取得から実際の利用まで、以下の手順で進めることができます。まず、platform.deepseek.comでアカウントを作成し、APIキーを取得します。その後、様々なプログラミング言語から、標準的なHTTPリクエストを使用してDeepSeek R1の機能にアクセスできます。

さらに、スマートフォンアプリも提供されており、完全な日本語対応で、R1の機能や検索機能を手軽に利用することができます。ただし、プロンプトは英語や中国語で作成したほうが、より精度の高い結果が得られる傾向にあります。

DeepSeek R1の料金やOpenAI o1シリーズとのAPI料金との違いを解説

ここでは、DeepSeek R1のWebアプリやAPI利用の料金について解説します。OpenAIのo1シリーズと料金比較をしながら、DeepSeekのコスト効率性を明らかにしていきます。

DeepSeek R1の料金

DeepSeek R1は、そのコスト効率の高さが大きな特徴の一つとなっています。WebUIを通じた基本的な利用は無料で提供されており、誰でも気軽に試すことができます。一方、API経由での利用は従量課金制となっており、入力トークン数と出力トークン数に基づいて料金が発生します。

API利用時の基本料金体系:
・入力トークン:100万トークンあたり0.14ドル(キャッシュヒット時)
・入力トークン:100万トークンあたり0.55ドル(キャッシュミス時)
・出力トークン:100万トークンあたり2.19ドル
・最大コンテキストウィンドウ:64K
・最大出力トークン:8K

特筆すべきは、DeepSeek APIが採用しているディスクベースのコンテキストキャッシング機能です。入力プロンプトが過去のリクエストと完全に一致した場合、大幅な料金割引(約75%)が適用されます。これにより、同じような問い合わせを繰り返し行う場合のコストを大幅に削減することができます。なお、キャッシュは64トークン未満のコンテンツには適用されず、未使用のキャッシュは数時間から数日で自動的に削除される仕組みとなっています。

 OpenAI o1シリーズとの比較

下記は、DeepSeek-R1とOpenAIのo1シリーズの推論モデルにおける入出力トークンあたりのAPI料金を比較したものです(単位:100万トークンあたり)。

DeepSeek-R1は入力と出力の両面において、OpenAIのo1シリーズと比べて高いコスト効率性を実現しています。

DeepSeek R1の実践的な活用方法と注意点

DeepSeek R1は、その高い性能と柔軟な利用環境により、様々な場面での活用が期待されています。ただし、効果的に活用するためには、適切な使用方法と注意点を理解しておく必要があります。

企業での活用シーンと具体例

企業環境においてDeepSeek R1は、特に研究開発、プログラミング支援、データ分析などの分野で高い効果を発揮します。その強力な推論能力と数学的問題解決力は、複雑な業務課題の解決に大きく貢献できます。

主な活用シーンとして以下が挙げられます。

・研究開発における数式や理論の検証
・プログラムコードの生成と最適化
・技術文書の作成と分析
・複雑なデータの解析と洞察の導出

特に、プログラミング分野での活用では、LiveCodeBenchで実証された高い性能を活かし、効率的なコード開発が可能です。また、最大128Kトークンという長いコンテキスト処理能力を活かして、大規模な技術文書の作成や分析にも効果的に活用できます。

導入時の注意点と制限事項

DeepSeek R1を導入する際には、いくつかの重要な注意点があります。特に、データの取り扱いとセキュリティに関する考慮が必要です。

利用時の主な注意点:
・法的考慮事項:中国の法律に準拠し、中国の裁判所が管轄となること
・データ保管:中国国内のサーバーでデータが保管されること
・言語処理:日本語での処理は英語・中国語と比較してやや精度が低い場合があること

また、実務での活用においては、出力結果の検証プロセスを確立することが重要です。特に重要な意思決定や正確性が求められる場面では、モデルの出力を人間が必ずレビューし、適切性を確認する体制を整えることが推奨されます。

DeepSeek R1の責任制限や保証に関する規定も重要な考慮点です。サービスの中断や不具合による損害について、DeepSeekは一切の責任を負わない方針を取っています。そのため、重要なシステムやミッションクリティカルな業務への導入には、適切なリスク評価とバックアップ体制の整備が必要です。

DeepSeek R1は、AI技術の革新的な進展を象徴する重要なモデルとして位置づけられます。OpenAIのo1シリーズと同等以上の性能を持ちながら、オープンソースという形で提供されることで、AI技術の民主化に大きく貢献しています。その独自の強化学習アプローチと効率的な学習アーキテクチャは、今後のAIモデル開発の方向性に大きな影響を与える可能性を秘めています。

特に注目すべきは、高度な推論能力と数学的問題解決力を備えながら、低コストで利用できる点です。これにより、大企業だけでなく、中小企業や研究機関でも高度なAI機能を活用できる可能性が広がっています。また、DeepSeek R1-Distillモデルの開発により、限られたリソースでも実用的な性能を発揮できる選択肢が提供されています。

ただし、中国発のAIモデルであることに起因する法的考慮事項やデータの取り扱いには、十分な注意が必要です。これらの課題に適切に対応しながら活用することで、DeepSeek R1は組織のイノベーションと効率化を促進する強力なツールとなるでしょう。今後のバージョンアップや機能拡張により、さらなる可能性が広がることが期待されます。


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