AIエージェントとは?種類やメリット、各社の取り組みを徹底解説

 
 

この記事でわかること

  • AIエージェントの基本と特徴
  • AIエージェントを構成する4つの要素
  • AIエージェントを活用するメリット3つ
  • AIエージェントに関する各社の取り組み
谷田 朋貴

監修者プロフィール

谷田 朋貴

一橋大学卒業後、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、Web専業広告代理店を経て、株式会社電通デジタルに入社。国内大手クライアントに対して、デジタル全体のプロモーション施策の戦略立案・実行に従事。また、生成AIを活用した自社業務の効率化にも取り組む。2023年12月、生成AIを活用した業務効率化支援を行う株式会社アドカルを創業。

AIエージェントは、人工知能技術の進化により実現した、自律的にタスクを実行できるシステムとして注目を集めています。単なる命令への応答だけでなく、目的に向かって自ら考え行動できる点が大きな特徴です。本記事では、近年話題のAIエージェントについて、基本的な仕組みから実践的な活用方法までを解説していきます。

特に企業におけるAIエージェントの活用は、業務効率化や顧客サービスの向上、意思決定支援など、幅広い分野で革新的な成果をもたらしています。OpenAIやGoogle、Microsoftなど、世界的な企業による開発競争も加速する中、その可能性は日々広がりを見せています。AIエージェントが企業にもたらす価値と、具体的な導入方法について、詳しく見ていきましょう。

AIエージェントの基本と特徴

AIテクノロジーの進化により、新たな形態のAIシステムとして注目を集めているAIエージェント。単なるタスク実行だけでなく、自律的な判断と行動を可能にするこの技術について、その基本的な特徴と仕組みを詳しく解説していきます。

AIエージェントの定義と仕組み

AIエージェントとは、与えられた目標に向かって自律的に判断・行動できる人工知能システムです。従来のAIシステムとは異なり、人間からの一つひとつの指示を待つことなく、目的を理解し、必要なタスクを自ら考えて実行する能力を持っています。

このシステムは以下のような特徴を備えています。

・環境認識能力:データベースやWebサービス、各種センサーからの情報収集
・自律的判断:状況に応じた最適な行動の選択と実行
・継続的学習:経験を蓄積し、パフォーマンスを向上
・目標指向:設定された目標達成に向けた計画的な行動

生成AIとの違いと独自の強み

生成AIが主にテキストや画像の生成に特化し、人間からの指示に対して単発的に応答するのに対し、AIエージェントは目標達成のための一連のプロセスを自律的に実行できます。

例えば、カスタマーサービスにおいて、生成AIは質問に対する回答の生成のみを行いますが、AIエージェントは以下のような包括的な対応が可能です。

・顧客の状況を継続的に理解し、最適な解決策を提案
・必要に応じて関連部署との自動連携を実施
・対応履歴の分析による将来的な改善点の特定
・カスタマージャーニー全体を通じた一貫したサポートの提供

このように、AIエージェントは環境との相互作用を通じた継続的な学習と適応能力を持ち、より複雑で長期的なタスクの自動化を実現することができます。

AIエージェントを構成する4つの要素

AIエージェントが自律的に機能するためには、4つの重要な構成要素が不可欠です。これらの要素が有機的に連携することで、環境認識から行動実行までの一連のプロセスが実現されます。それぞれの要素がどのように機能し、全体のシステムに貢献しているのかを詳しく見ていきましょう。

環境認識による状況把握

環境認識は、AIエージェントが活動する場(環境)の状態を正確に把握し、理解する機能です。例えば、オフィスワーク支援のAIエージェントでは、業務システムの状態、スケジュール情報、タスクの進捗状況などを認識対象としています。これにより、常に最新の状況を把握し、適切な判断の基盤を形成することができます。

この環境認識機能は、以下のような要素を統合的に処理します。

・リアルタイムデータモニタリング:システムの現在の状態を継続的に監視
・パターン認識:データの中から重要な傾向や異常を検出
・コンテキスト理解:状況の文脈や背景を総合的に分析
・変化の予測:過去のデータを基に今後の変化を予測

センサー機能による情報収集

センサー機能は、環境から必要な情報を収集する重要な役割を担います。デジタル環境では、APIを通じたデータベースへのアクセスや外部サービスからの情報取得を行います。また、物理的な環境では、カメラによる画像認識、マイクによる音声取得、温度センサーによる環境データの取得など、多様なセンシング技術を活用します。

これらのセンサーは常時稼働しており、環境の変化をリアルタイムで捉えることができます。例えば、製造ラインでは、生産設備の稼働状態、温度、振動などの物理的なデータを継続的に収集し、異常の早期発見や予防保全に活用しています。

意思決定メカニズムによる判断

収集した情報をもとに、目標達成のための最適な行動を選択するのが意思決定メカニズムです。このメカニズムでは、大規模言語モデル(LLM)や機械学習技術を活用し、人間のような思考プロセスを実現しています。過去の経験データ、現在の状況、予測される結果を総合的に分析し、最適な判断を導き出します。

例えば、在庫管理システムでは、過去の販売データ、季節変動、市場トレンドなどの要因を考慮しながら、最適な発注量と発注タイミングを判断します。この過程では、コスト効率、在庫リスク、納期などの複数の要因をバランスよく考慮することが求められます。

アクチュエーターによる行動実行

アクチュエーターは、意思決定の結果を具体的な行動として実行する機能を担います。デジタル環境では情報の入力や更新、システム設定の変更などを実行し、物理環境では機器の制御や操作などを行います。この要素により、AIエージェントは判断を実際の行動に移し、設定された目標の達成に向けて具体的な成果を生み出すことができます。

具体的な例として、スマートファクトリーでは、生産ラインの制御、ロボットアームの操作、搬送システムの制御など、様々な物理的な動作を実行します。また、オフィス環境では、スケジュール調整、メール送信、データ入力など、デジタルな操作を自動的に実行することで、業務の効率化を実現しています。

AIエージェントを活用するメリット3つ

AIエージェントの導入は、企業に様々な形で価値をもたらします。特に業務効率化、ミス削減、そしてユーザー体験の向上という3つの側面で大きな効果が期待できます。それぞれのメリットについて、具体的な事例とともに見ていきましょう。

業務効率化による人件費削減

AIエージェントによる業務効率化は、単なる作業の自動化を超えた価値を生み出します。人間が都度指示を出す必要がなく、AIエージェントが自律的にタスクを遂行するため、業務プロセス全体の効率が大幅に向上します。

AIエージェントがもたらす効率化のポイントは以下の通りです。

・24時間365日の継続的な業務遂行が可能
・複数のタスクの同時並行処理
・業務の優先順位付けと最適なリソース配分
・反復的な作業の完全自動化
・データ分析と意思決定の迅速化

人間によるミスの削減

AIエージェントは、プログラムされたルールや学習した内容に基づいて一貫した判断と行動を行うため、人的ミスを大幅に削減することができます。例えば、データ入力業務では、人間が行う場合に比べてエラー率を著しく低下させることが可能です。また、複雑な計算や多岐にわたるチェック項目を確実に処理し、品質の安定化を実現します。

特に金融機関での取引処理や医療機関での投薬管理など、高い精度が要求される業務において、このミス削減効果は重要な価値となります。AI エージェントは疲労や気分による作業品質の変動がなく、常に同じ水準のパフォーマンスを維持できます。

ユーザー体験の向上

AIエージェントの導入は、サービスを利用するユーザーの体験を大きく向上させます。例えば、カスタマーサポートでは、24時間即時の応答が可能となり、待ち時間の解消や迅速な問題解決につながります。また、ユーザーの過去の行動や好みを学習することで、よりパーソナライズされたサービスを提供することも可能です。

さらに、複数の業務システムを連携させることで、ユーザーはシームレスなサービス体験を得ることができます。例えば、ECサイトでの購入からアフターサポートまで、一貫した対応を受けることができ、顧客満足度の向上につながります。また、AIエージェントが蓄積した知識を活用することで、より的確な商品推薦や情報提供が可能となり、ユーザーの意思決定をサポートします。

AIエージェントに関する各社の取り組み


AIエージェント技術は、世界的なテクノロジー企業から国内の主要企業まで、幅広い企業が開発にしのぎを削っています。それぞれの企業が独自の強みを活かしながら、革新的なソリューションの開発を進めています。

OpenAI

ChatGPTの開発元として知られるOpenAIは、AIエージェント開発の最前線に立っています。同社は2025年1月に、コンピューターを自律的に操作してタスクを実行できる新たなAIエージェント「Operator(オペレーター)」の提供を開始しました。この技術は、PCの操作を自動化し、複雑な業務プロセスを効率化することを目指しています。

※2025年2月時点では日本国内では利用できません。

最新の開発状況は以下の通りです。

・開発者向けツールのプレビュー版を2025年初頭にリリース
・自然言語による指示でPCを操作する機能を実装
・セキュリティと制御機能の強化に注力
・APIを通じた外部サービスとの連携機能

Google

Agentspaceは企業内ポータルサイトのような使いやすいユーザーインターフェースを採用しており、Google Workspaceをはじめ、Microsoft SharePoint、Salesforce、ServiceNow、Dropbox、Box、Confluence、Jiraなど、多様なサービスとの連携が可能です。これらのサービスに対して、参照するデータをサービスごとに柔軟に選択できる仕組みを備えています。

具体的な活用例として、製品発表のプレスリリース作成におけるワークフローが挙げられます。ユーザーがAIに「製品発表のプレスリリースを見せてほしい」と指示すると、AIは社内データから関連ファイルを検索して列挙し、各ファイルの要約を自動的に表示します。ユーザーは必要な参照データを選択し、それらのデータを基にAIがプレスリリースの下書きを作成します。この仕組みにより、AIのハルシネーション(幻覚)を防ぐRAG(検索拡張生成)の実装を簡易化しており、生成AIを単なる支援機能から実際の業務をこなすエージェントへと進化させる重要な一歩となっています。

MicrosoftやSalesforceなども業務用AIエージェントサービスを展開していますが、Googleは社内データとの連携に重点を置いた独自のアプローチを取っています。企業の既存システムやデータを活用しながら、業務効率化を実現する新しいソリューションとして、今後の展開が注目されています。

Anthropic

Anthropicは2024年10月下旬、AIモデル「Claude」の新バージョンとして、コンピューターを直接操作してタスクを実行できる機能を発表しました。この新機能により、Claudeはウェブ検索、アプリケーションの起動、マウスとキーボードを使用したテキスト入力などの基本的なコンピューター操作を行えるようになりました。

具体的な活用例として、Anthropicの最高科学責任者であるジャレッド・カプランが示したデモでは、ユーザーからの「友人と一緒にゴールデンゲートブリッジで日の出を見に行く計画を立てる」という依頼に対し、Claudeが自らGoogle Chromeを開いて関連情報を検索し、最適な観賞地点や時間帯を調べ、さらにカレンダーアプリで予定を作成するという一連の作業を実行しました。

また、別のデモでは、Claudeが自身を宣伝するためのウェブサイト作成タスクに取り組み、Visual Studio Codeを使用してコードを記述し、ターミナルでウェブサーバーを立ち上げるなど、より複雑な作業も実行できることを示しました。さらに、ユーザーからの修正依頼に応じて、コード内の問題箇所を特定して修正することもできました。

ただし、この技術にはまだ課題も残されています。特に信頼性の面では、OSWorldというベンチマークテストにおいて、Claudeは人間の正確性(約75%)には及ばず、タスクを正確に実行できる確率は14.9%に留まっています。とはいえ、これは既存の優秀なAIエージェント(約7.7%)と比較すると約2倍の性能を示しています。

実用面では、すでにCanva、Replit、The Browser Company、Asana、Notionなどの企業が初期ユーザーとしてClaudeを試用しており、デザイン、編集、コーディング作業の自動化などに活用しています。Anthropicは安全性に配慮し、クレジットカードを使用した購入機能など、一部の機能を意図的に制限しています。

Microsoft

Microsoftは2024年12月、同社のIgniteカンファレンスにおいて、Microsoft 365向けの新しい「AIエージェント」機能を発表しました。この機能は、一度設定すれば後は自動で作業を進められる仮想の同僚のような存在として位置づけられています。

具体的な機能として、Microsoft Teamsの会議内容の要約作成、IT関連の質問への回答、プロジェクトの計画立案、タスクの割り当てなどを自動的に実行することができます。従来、Microsoftが提供していたAIエージェントは主に営業や財務部門向けの特化型機能でしたが、今回のアップデートによってMicrosoft 365全体での活用が可能となり、その用途が大幅に拡大しました。

ただし、これらの新機能の多くは段階的な展開となります。例えば、Teamsのリアルタイム翻訳ボット「Interpreter」は2025年からの提供開始が予定されています。現在、AIエージェント機能を利用するにはMicrosoft 365の基本料金に加えて月額200ドルの追加料金が必要です。

開発者向けには、SDKを通じてMicrosoft 365向けの独自エージェントを作成できる機能も提供されており、現在パブリックプレビュー段階にあります。また、Copilot Actionsは現在プライベートプレビュー中で、将来的にはMicrosoft 365 Copilotサブスクリプションを利用するすべてのユーザーが利用可能になる予定です。

その他企業

国内でも、NTTデータや伊藤忠テクノソリューションズなど、多くの企業がAIエージェントサービスの開発と提供を始めています。特に、製造業や金融業など、特定の業界に特化したAIエージェントソリューションの開発が活発化しています。これらの企業は、業界特有の課題やニーズに対応した専門的なソリューションを提供することで、差別化を図っています。

また、スタートアップ企業も、特定の業務領域に特化したAIエージェントの開発や、新しい活用方法の提案など、革新的なアプローチで市場に参入しています。このような多様な企業の参入により、AIエージェント市場は急速な発展を遂げています。

業界別AIエージェントの活用事例


AIエージェントは、様々な業界で革新的な変化をもたらしています。それぞれの業界特有のニーズに応じて、独自の活用方法が確立されつつあります。具体的な活用事例を通じて、その可能性を探っていきましょう。

マーケティング部門での活用例

マーケティング部門では、AIエージェントを活用することで、顧客理解と施策の最適化を実現しています。特に以下の領域で効果を発揮しています。

・リアルタイムの顧客行動分析とセグメンテーション
・パーソナライズされた商品レコメンデーション
・最適なタイミングでのプロモーション配信
・競合分析と市場トレンドの把握
・マーケティングROIの継続的な最適化

例えば、大手ECサイトでは、顧客の閲覧履歴や購買パターンを分析し、個々の顧客に最適なタイミングで商品を提案するAIエージェントを導入しています。

カスタマーサポートでの活用例

カスタマーサポート分野では、AIエージェントが24時間体制での顧客対応を可能にし、サービス品質の向上に貢献しています。例えば、製品の使い方や故障時の初期診断を対話形式で案内し、必要に応じて適切な解決策や関連資料を提供します。また、問い合わせ内容から重要度を判断し、緊急性の高い案件は即座に人間のオペレーターに転送するなど、効率的な対応の振り分けも実現しています。

さらに、過去の対応履歴を学習することで、回答の精度と的確性が継続的に向上します。これにより、顧客満足度の向上だけでなく、サポート部門の業務効率化にも大きく貢献しています。

サプライチェーンでの活用例

サプライチェーン管理においては、需要予測から在庫管理、生産計画の最適化まで、AIエージェントが複雑な業務プロセスを効率化しています。過去の売上データ、天候、イベント情報などを総合的に分析し、製品ごとの需要を高精度に予測します。また、製造ラインの稼働状況や在庫を常時監視し、必要に応じて生産計画を自動調整することで、在庫の適正化と納期遵守を実現しています。

特に、グローバルなサプライチェーンを持つ企業では、複数の地域や取引先との調整が必要となりますが、AIエージェントがこれらの複雑な調整を自動化することで、業務効率の大幅な向上を実現しています。

社内業務効率化での活用例

社内の業務効率化においては、AIエージェントがバーチャルアシスタントとして機能し、日常的な業務をサポートしています。メールの内容を解析し、重要度に応じて自動分類・整理を行い、期限が設定されているものは自動的にタスクとしてスケジュール管理システムに登録します。また、会議の議事録を自動作成し、重要なアクションを抽出してタスク化する機能も実装されています。

さらに、社内の様々なシステムと連携することで、データ入力や報告書作成などの定型業務を自動化し、従業員がより創造的な業務に注力できる環境を整備しています。このように、AIエージェントは単なる業務の自動化だけでなく、働き方改革の推進にも貢献しています。

AIエージェントは、企業のデジタルトランスフォーメーションにおいて重要な役割を果たす技術として、急速に進化を遂げています。自律的な判断能力と実行力を持つAIエージェントは、すでに様々な分野で革新的な成果を上げており、今後はより一層の進化が期待されています。

これからのビジネス環境において、AIエージェントと人間がそれぞれの強みを活かしながら協力することで、より豊かで創造的な未来を築いていけるでしょう。企業がこの技術をどのように活用し、どのような価値を生み出していくのか。その可能性は無限に広がっています。今後も、AIエージェント技術の発展と共に、新たなビジネスモデルや働き方の変革が進んでいくことでしょう。


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