Google広告のポートフォリオ入札戦略とは?設定方法やデメリットなど

 
 

この記事でわかること

  • ポートフォリオ入札戦略の概要と特長
  • ポートフォリオ入札を使うメリットとデメリット
  • ポートフォリオ入札の具体的な設定方法
  • ポートフォリオ入札が特に効果を発揮するシーン
  • 導入事例から見る、ポートフォリオ入札の運用効果
  • ポートフォリオ入札の導入検討の進め方
谷田 朋貴

監修者プロフィール

谷田 朋貴

一橋大学卒業後、伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社、Web専業広告代理店を経て、株式会社電通デジタルに入社。アカウントプランナーとして国内の大手クライアントに対し、運用型広告を中心にデジタル全体のプロモーション施策の戦略立案・実行に従事。2023年12月、株式会社アドカルを創業。

Google広告の運用効率化を図る上で、ポートフォリオ入札戦略は非常に有効なツールです。

本記事では、ポートフォリオ入札の基本的な仕組みから設定方法、メリット・デメリット、活用シーンまで、網羅的に解説します。運用の悩みを抱える広告主様は、ぜひ最後までお読みください。

Googleのポートフォリオ入札戦略は複数のキャンペーンがある時に、個別最適ではなく、キャンペーン全体で目標達成を目指す機能です。ここでは、ポートフォリオ入札戦略について詳しく解説しております。

Google広告のポートフォリオ入札戦略とは?

ポートフォリオ入札戦略は複数キャンペーンの入札管理を統合的に行う機能

Google広告のポートフォリオ入札戦略とは、複数のキャンペーンをグループ化し、まとめて入札の管理・最適化を行う機能のことです。

通常、Google広告では、キャンペーン単位で入札戦略を設定し、自動入札を活用して運用の効率化を図ります。しかし、キャンペーン数が多くなるほど、個別に最適化する手間が増大してしまうという課題がありました。

これに対し、ポートフォリオ入札戦略を用いれば、キャンペーン横断で共通の目標を設定することができ、自動入札によってキャンペーングループ全体の目標達成に向けて入札が最適化されます。つまり、個別キャンペーンの入札戦略を細かく設定・管理する必要がなくなるのです。

また、ポートフォリオ入札ではキャンペーン間の予算配分も自動で最適化されるため、人の手を介さずとも、パフォーマンスの高いキャンペーンにより多くの予算が配分されるようになります。広告運用者は、煩雑な入札調整のための時間を削減し、より戦略的なタスクに注力することが可能となるでしょう。

ポートフォリオ入札戦略の基本的な仕組み

ポートフォリオ入札戦略の基本的な仕組みは、以下のようなステップで成り立っています。

1.キャンペーングループの作成
最適化したい複数のキャンペーンを選択し、1つのキャンペーングループ(ポートフォリオ)にまとめます。

2.共通の入札戦略の設定
キャンペーングループ全体で目指すべき目標(コンバージョン単価、費用対効果、クリック数など)を設定し、自動入札の種類を選択します。

3.入札の自動最適化
機械学習を活用し、キャンペーングループ内の各キャンペーンに対して、リアルタイムに入札単価を最適化します。より目標達成に近づくキャンペーンの入札を優先的に高めていきます。

4.キャンペーン間の予算配分最適化
パフォーマンスの高いキャンペーンにより多くの予算を自動で配分。個別キャンペーンの日予算は、グループ全体の目標達成に向けて動的に調整されていきます。

このように、ポートフォリオ入札戦略では、キャンペーングループという新しい単位で自動入札を用いることで、運用者の工数を大幅に削減しつつ、パフォーマンス向上を狙える点が特徴と言えるでしょう。

ポートフォリオ入札戦略を導入することで、広告運用における様々なメリットが得られます。ここでは特に重要な3つのメリットについて詳しく解説します。

ポートフォリオ入札戦略を導入することで、広告運用における様々なメリットが得られます。ここでは特に重要な3つのメリットについて詳しく解説します。

1.入札戦略が管理しやすい

ポートフォリオ入札戦略の第一のメリットは、複数キャンペーンの入札を一元管理できることで運用効率が大幅に向上する点です。

従来は、個別キャンペーンごとに入札戦略を設定・調整する必要がありましたが、ポートフォリオ入札戦略を用いれば、グループ全体で共通の目標に向けて自動入札が最適化されるため、キャンペーン個別の設定にかかる工数を削減できます。

特に、扱う商材やサービスが増えてキャンペーン数が肥大化してくると、1つずつ最適化していくのは非常に骨の折れる作業となります。しかし、ポートフォリオ入札を活用することで、人の手を介さずとも効率的な運用が可能となるのです。

2.入札戦略の変更によるパフォーマンスへの影響を比較しやすい

また、ポートフォリオ入札では、グループ内で異なる入札戦略を比較検証するのが容易という利点もあります。

例えば、あるキャンペーングループに「目標広告費用対効果」の自動入札を設定し、別のグループには「目標コンバージョン単価」を設定することで、それぞれの入札戦略がパフォーマンスに与える影響を分かりやすく比較できます。

この結果を受けて、より効果の高い入札戦略をキャンペーン全体に展開することも可能です。パフォーマンス向上施策の検証サイクルを回す上でも、ポートフォリオ入札は非常に有用なツールと言えるでしょう。

3.上限CPCが設定可能

加えて、ポートフォリオ入札のもう一つの大きなメリットとして、キーワードやオークションごとの入札単価の上限(上限CPC)を設定できる点が挙げられます。自動入札任せにしていると、機械学習によって本来許容できる範囲を超えた入札単価が設定されてしまうケースがあります。

例えば、通常は数十円〜数百円程度のクリック単価が、突如数千円の高額なものになってしまった、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。その結果、獲得単価や費用対効果の目標を大きく上回ってしまい、広告予算を圧迫するリスクもあります。

しかし、ポートフォリオ入札戦略では、このような高額入札を防ぐための「上限CPC」を設けられるのです。許容できる範囲の最高入札単価を予め設定しておくことで、いくら自動入札が頑張ろうとも、その価格を超えた入札は行われなくなります。

広告主様の予算やコスト管理の面でも、ポートフォリオ入札のメリットは大変大きいと言えるでしょう。過度な入札を防ぎ、費用対効果の高い運用を安定して行える環境を整えることが可能となります。

ポートフォリオ入札戦略には上述のような様々なメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらの点にも十分留意が必要でしょう。

ポートフォリオ入札戦略を使うデメリット3点

1.キャンペーン間で運用目的や目標設定が大きく異なる場合、十分な効果が得られない

まず、ポートフォリオ入札は各キャンペーンを一律に最適化する仕組みであるため、キャンペーン間で運用目的や目標設定が大きく異なる場合、十分な効果が得られないことがあります。例えば、新商品の認知拡大を狙ったキャンペーンと、既存商品の売上向上キャンペーンでは、本来異なる目標設定や最適化が求められるはずです。しかし、ポートフォリオ単位では、それぞれの事情に合わせた柔軟な運用は難しいと言えるでしょう。

2.上限CPCを設定するとパフォーマンスが低下するリスクもある

また、上述のメリットでは上限CPCの設定がコスト管理に役立つと説明しましたが、一方でこの設定を行うことは機械学習の妨げになるとGoogle側からは推奨されていません。上限CPCを設定することで、本来効果の出るはずの入札機会を逃してしまい、結果的にパフォーマンスが下がるリスクも考えられます。

3.成果が出るまでに時間がかかる

加えて、ポートフォリオ入札は事前に一定のパフォーマンスデータを学習する必要があるため、導入初期はなかなか成果が現れにくいこともデメリットの一つです。特に新規キャンペーンを立ち上げてすぐにポートフォリオ入札を設定しても、十分なデータがないため最適化の精度は期待できません。継続的な運用によってパフォーマンスが向上していくことを念頭に置くべきでしょう。

前述の通り、ポートフォリオ入札戦略では、キャンペーングループ全体に共通の自動入札戦略を適用することで、効率的な運用を目指すことができます。Google広告では、ポートフォリオ入札で設定可能な6種類の自動入札戦略が用意されています。それぞれの特徴をおさえて、目的に合った最適な戦略を選択しましょう。

自動入札戦略詳細
目標CPAコンバージョン単価(CPA)の目標値を設定し、その目標に近づけるように自動で入札単価を調整します。コンバージョンを一定の費用対効果で獲得したい場合に有効な戦略です。
目標ROAS広告費用対効果(ROAS)の目標値を設定し、常にその目標値に近づくよう入札を自動調整します。投資対効果を重視する広告主におすすめの戦略と言えるでしょう。
最大クリック数日予算内で最大限のクリック数を獲得するように入札単価を自動調整します。とにかく多くのサイト訪問者を獲得したい場合に効果的です。
目標インプレッションシェア指定したキーワードで常に一定のインプレッションシェア(広告の表示割合)を確保できるよう入札を自動調整します。ブランディングキャンペーンなどで特定のキーワードの露出を最大化したい場合に適しています。
目標インプレッション平均順位検索結果画面での平均掲載順位を指定し、その順位を維持できる水準まで自動的に入札単価を引き上げます。やはり露出を重視したいキャンペーンで効果的でしょう。
上限CPC入札単価の上限を設定する戦略です。キーワードや検索クエリ、デバイス、ユーザーの属性などに合わせて、きめ細かな上限設定が可能です。コスト管理の観点から非常に重要な戦略の一つと言えます。

このように、Google広告のポートフォリオ入札戦略では、キャンペーンの目的に合わせて柔軟に自動入札を設定できるのが大きな特長です。コンバージョン重視型、クリック数重視型、露出重視型など、戦略の選択肢も非常に豊富なため、様々な広告主のニーズに対応が可能となっています。

最適な戦略を見極め、キャンペーングループ全体の成果を最大化していきましょう。

Google広告の管理画面にログインし、ページ左側メニューの「ツール」から「予算と入札単価」をクリックして、「入札戦略」を選択します。

Google広告の管理画面にログインし、ページ左側メニューの「ツール」から「予算と入札単価」をクリックして、「入札戦略」を選択します。


下記の画面で「+」ボタンを押します。


入札戦略の種類を選択します。今回は「目標コンバージョン単価」を設定してみましょう。


まず、戦略の名前を入力したら、目標コンバージョン単価を設定します。

続いてこの入札戦略グループに含めるキャンペーンを選択し、「このポートフォリオ入札戦略で使う共有予算を作成する」にチェックを入れて、1日の平均費用を設定しましょう。

入札単価の上限と下限については最初は設定せずに、まずは機械学習に任せましょう。設定が完了したら、左下の保存を押しましょう。


これで、ポートフォリオ入札戦略の作成は完了です。

ポートフォリオ入札を設定する際は、以下のような点に注意が必要です。

機械学習には一定のデータ量が必要なため、少なくとも2週間以上は継続した運用を行い、パフォーマンスデータを蓄積することが大切です。
複数のポートフォリオグループ間で、同一のキャンペーンを含めることはできません。重複設定にご注意ください。
検索キャンペーンとディスプレイキャンペーン、動画キャンペーンなど、キャンペーンの種類が異なるものは、同じポートフォリオグループには入れない方が賢明です。それぞれ最適化のロジックが異なるためです。

上限CPCは設定せずにスタートし、ある程度学習が進んだところで効果を見ながら適宜設定していくのが望ましい方法と言えます。
ポートフォリオ戦略の変更は、即座には反映されません。実際に入札や予算配分に影響が出るまで、1〜2日程度のラグがあると覚えておきましょう。

ポートフォリオ入札戦略の設定は、一見複雑そうに思えますが、手順通りに進めていけばそれほど難しくありません。各キャンペーンを的確にグループ化し、目的に合った自動入札を設定することがポイントです。ぜひ、定期的にレポートをチェックしながら、継続した運用改善を図っていきましょう。

ここまで、ポートフォリオ入札戦略の概要や設定方法について解説してきました。では、実際にポートフォリオ入札が特に効果を発揮するのは、どのようなケースでしょうか。ここからは、ポートフォリオ入札の活用が最適な3つのシーンをご紹介します。

ここまで、ポートフォリオ入札戦略の概要や設定方法について解説してきました。では、実際にポートフォリオ入札が特に効果を発揮するのは、どのようなケースでしょうか。ここからは、ポートフォリオ入札の活用が最適な3つのシーンをご紹介します。

1.複数キャンペーンの一元管理で運用効率化を狙う

1つ目のシーンは、地域ごとに分けてキャンペーンを運用している場合です。

例えば、地域密着型の電力会社が、提供エリアごとに電気料金プランを訴求するキャンペーンを展開しているとします。あるいは、全国にチェーン展開しているテーマパークが、店舗ごとに最寄り駅からのアクセスを訴求するキャンペーンを作成している、といった具合です。

このように地域特性に合わせてキャンペーンを分けている場合、通常は地域ごとに入札戦略を設定・調整する必要があり、運用担当者の工数がかさんでしまいます。しかしポートフォリオ入札を用いれば、地域別キャンペーンを1つのグループとして一元管理できるため、運用効率を大幅に高められるでしょう。

また、地域によって競争環境や市場規模が異なるため、一律の入札設定では十分なパフォーマンスが出ないケースもあります。

ポートフォリオ入札なら、地域ごとの特性に合わせた入札価格の最適化を機械学習に任せられるため、大幅な成果改善も期待できるはずです。全国規模の広告展開を効率的に運用したい広告主様は、ぜひポートフォリオ入札の活用を検討されてみてください。

2.異なる商材を扱う複数キャンペーンの最適化に

2つ目のおすすめシーンは、複数の商材を扱っており、それぞれ別のキャンペーンを展開しているケースです。分かりやすい例が、ECサイトの商品カテゴリごとのキャンペーン展開や、旅行代理店の旅行先別キャンペーン展開などです。

商材ごとに売上規模や利益率が異なるため、通常はキャンペーンごとに目標値を設定し、個別に運用するのが一般的です。ですが、会社としては全体での売上最大化を図りたいもの。そこで活躍するのが、ポートフォリオ入札戦略です。

商材別キャンペーンをポートフォリオグループ化し、全体での目標売上や目標ROASを設定することで、マシンラーニングが各キャンペーンへの予算配分を自動調整してくれます。つまり、売上貢献度の高い商材により多くの広告予算を割り当て、全体の売上最大化を狙う運用が可能になるのです。

個別キャンペーンの成果は多少落ちるかもしれません。しかし、部分最適ではなく全体最適の視点で予算配分を最適化することこそ、ポートフォリオ入札の真骨頂。経営目標と連動した広告運用を実現する上で、非常に有効なアプローチだと言えるでしょう。

以上、ポートフォリオ入札が効果的な2つのシーンをご紹介しました。地域別、商材別の細分化したキャンペーン構造を一元管理し、全体での成果を最大化したい広告主様は、ポートフォリオ入札の導入を積極的にご検討ください。

実際にポートフォリオ入札戦略を導入し、大きな成果を上げている企業事例を2つご紹介しましょう。

A社の事例:キャンペーン統合で工数削減と売上向上

1社目は、全国にチェーン展開しているスーパーマーケットA社の事例です。A社では当初、店舗ごとに個別のGoogle広告キャンペーンを作成し、店舗担当者が手動で入札調整を行っていました。しかし、店舗数の増加に伴い、キャンペーン管理の工数が肥大化。さらに、店舗間での予算配分ロジックが属人的であるため、パフォーマンスが十分に最適化できていないという課題がありました。

そこでA社は、店舗別キャンペーンをポートフォリオ入札でグループ化し、一元管理する方式に移行。加えて、各店舗の前年売上実績に連動して広告予算が自動で配分されるルールを設定しました。

この施策によって、運用担当者の工数は約60%削減されました。各店舗の売上状況に合わせたきめ細かな予算配分が自動で行われるようになったため、広告費用の無駄がなくなり、売上高は前年比15%アップという成果につながりました。ポートフォリオ入札による運用自動化と最適化が、大きな効果を発揮した事例と言えるでしょう。

B社の事例:自動予算配分でROAS20%改善

2社目は、複数のブランドを展開する化粧品メーカーB社の事例をご紹介します。

B社では、ブランドごとに別のキャンペーンを展開していましたが、ブランド間での予算配分の最適化に課題を抱えていました。各ブランドの広告担当者は売上目標を達成するために予算を取り合う形になり、結果として会社全体での投資対効果が見えにくくなっていたのです。

この状況を打開するため、B社はブランド別キャンペーンをポートフォリオグループに統合。その上で、全社のROAS目標を設定し、自動入札による予算の最適配分にゆだねる運用を開始しました。するとどうでしょう。機械学習を活用した予算配分最適化が功を奏し、運用ROAS平均20%アップを達成。さらに、ブランド間の予算配分を巡る調整業務がなくなったことで、運用担当者の工数も30%削減できたそうです。

複数ブランドを扱う広告主にとって、ブランド間の適切な予算配分は永遠の課題と言えます。しかし、B社の事例を見れば、ポートフォリオ入札の自動最適化によって、その課題を見事に解決できることが分かります。ブランドの部分最適ではなく、全社的な投資対効果の向上を目指す広告主様は、ぜひポートフォリオ入札の導入を前向きに検討されてはいかがでしょうか。

ここまでポートフォリオ入札戦略について、基本的な仕組みから設定方法、メリット・デメリット、活用シーンまで幅広く解説してきました。

当記事を参考に、ポートフォリオ入札戦略を導入し、リスティング広告の成果を最大化しましょう。


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